第100章 仮面の男と新たな仲間
「なんか破れ方が妙だったんだよね」
「妙って?」
「こう、鉤爪に引っ掛かれたような跡があって。なんか大型の獣に襲われたような感じの__」
突然耳障りな鳴き声が轟いた。
喉を押しつぶしたようにひしゃげた、金属音の混じったような、鳥の鳴き声に酷似したその咆哮は突如頭上から降り注ぎ地響きが二人を襲った。
船の上を見る。マストに絡まるそれの先で三本の鉤爪がギラリと光った。
「なにあれ?!」
見たことのない生物に水琴は声を上げる。
それは鳥と爬虫類を足したような奇妙な姿をしていた。全体の造形はトカゲやワニに近いが、背や頭には羽毛のような毛が生えている。
両腕には薄い皮膜が水かきのようについており、両腕を広げればまるでパラグライダーのようだった。
メインマストがただの止まり木に見える巨体に水琴とデュースは慌てて船縁に張り付き息を殺す。
幸運にも水琴の叫び声は聞こえなかったようで、その生物は甲板に飛び降りるとぐるりと丸くなった。
「あんな大きな生き物この島にいたんだ……」
「ひょっとしたらこの崖が住処なのかもしれないな。しかしこれはまずいぞ」
船からは崖が丸見えだ。帰るために登ろうとすればすぐに見つかってしまうだろう。
あの生き物が温厚な性格であればいいが、鉤爪といい口元から覗く鋭い歯といい完全に捕食者である見た目を前にその考えはちょっとばかり楽観的過ぎる。
どうしようか、と悩んでいれば甲板から低い唸り声のようなものが聞こえ始めた。
そっと風になり手すりから顔だけだし様子を窺えばどうやら寝入っているらしい。
これはチャンスかもしれない、と水琴はデュースに上の様子を伝えた。
「なるほど。今なら気付かれずに登れるかもしれないな」
「私は風になればすぐに上がれるから、まずはデュースが行って」
「エースはどうする?」
「デュースが上まで無事に上がれたら私が呼びに行く」