第1章 闇の鍵と無の組織
「これでも急いでいるんだけどな」
僕は彼とみんなを引き連れてオンボロ寮に帰ってきていた。
「この事件の解決には、あなたの力が必要なんです」
僕は彼にも学園長からの依頼について話した。
「既にハートレスがそこまで侵食しているのか……」
「その、ハートレスってなんだ?」
僕達の疑問を代弁するように、グリムが質問する。
「簡単に言うなら、心に巣食う闇そのものと言ったところだな。心に潜む闇に反応して現れ、人の心を食う。だが、奴らも元は俺たちと同じ人間で、心の闇に飲み込まれてしまってあの姿になったんだ」
背筋が冷えた。
今の話が本当なら、生徒はそのハートレスというものになり襲いかかってきているということだ。
そんな恐ろしいことがこんなに身近で起きてしまうなんて。
デュースの言った通り、手を引いた方がいいのかもしれない。
でも、見過ごすこともできない。
僕は腹を括ることにした。
「そいつらを元に戻すことはできないのか?」
ジャックが問う。
「キーブレードなら、捕らわれた心を解放して元通りにできる」
そう言うと、彼は何もない空間から剣のようなものを出現させた。
僕達はそれに興味津々でその剣を見た。
暫くしてデュースが顔を上げて、質問をする。
「これが、そうなのか?」
「ああ。これ以外で攻撃して倒せたとしても、それは一時的に消しているだけだ。後でまたハートレスになってしまう」
そう言うと、彼はキーブレードをしまった。
何も無い空間からそんな大きなものを出したりしまったりできるなんて、実は凄い魔法を使っていたりするんだろうか。
何はともあれ、彼らを元に戻す方法があることは分かった。
であれば。
「僕達に、協力してもらえませんか」
「さっきの、学園長ってやつの頼み事のことか?」
僕は頷く。
「……。確かに、協力できるならするに越したことは無いかもしれないな」
彼は頷き、言った。
「自己紹介がまだだったな。俺はリク。よろしくな」
「オレはエース」
「僕はデュースだ」
「……ジャック」
「オレ様は、大魔法師になる予定のグリム様なんだゾ」
「ユウです」
こうして僕達は無事に協力関係を築き上げたのだった。