第1章 闇の鍵と無の組織
今学園には、深刻な問題が起きている。
「また、生徒が……」
何故かここ数日、生徒が突如謎の黒い影に襲われ行方不明になる事件が起きているのだ。
それも1人や2人なんてものでは無い。
数十人単位で消えてしまっている。
「何とかしてもらえませんかね」
まさかとは思ったが、また僕達に解決させるために呼び出したのか。
しかしこの学園長、なぜ毎回僕達を頼るのだろう。
それでも教師、というか大人なのか。
「流石に、消えた生徒の捜索は警察とかそういう所に届け出た方がいいんじゃ……」
僕は真っ当な提案をしたと思う。
しかし、この世界のしかも目の前にいるダメなタイプの人間には通じるはずもなく。
「それだと私の責任が……。いえ、生徒のためにもあなたにお願いしたいんです。いやまぁ、どうしてもと言うならいいですけど、私優しいので。あーあー、解決してくれたら高級ツナ缶あげようと思ったのになー、私優しいので!」
何がどう生徒のためなのか全く分からない。
わざとらしく言う学園長に、呆れる僕とは対照的にずっとそばで聞いていたグリムは目を爛々とさせて足を揺すってきた。
「おい、オマエ。高級ツナ缶だゾ。引き受けるしかないんだゾ!」
どう考えても高級とはいえツナ缶とそんな危険な問題の解決とじゃ割に合わない。
しかし、そんな考えなど一切浮かんでなさそうなこのモンスターは何も考えずに引き受けると言ってしまった。
もう、どうにでもなってしまえ。
「そうですか、そうですか! では、よろしくお願いしますよ」
ニコニコする2人を眺めながら僕は、ここ数日で1番大きなため息をついた。