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戦乱の蝶姫

第21章  情報の開示


そう言うと、彼は不貞腐れたように明後日の方向を向いてしまった。やっぱり、今朝の朝餉の時のことを怒っているのだろうか。…流石に、あれだけ真っ赤にしていたら止めたくもなりますよ。あれは、本当に食材の原型が無くなっていました。

「…朝餉の時のこと、やっぱり怒ってます?」

そう彼の方を向いて言うと、彼は未だに明後日の方向を向きながらボソっと呟いた。

「…それじゃないから、ばか。……はぁ。」

「…何故いきなり罵倒を浴びせられるのでしょうか?」

「…自分で考えて、鈍感。」

「…やっぱり、喧嘩売ってます?」

「……はぁ。」

「……?」

私は、家康さんの意味不明な言動に頭を悩ませながらももうそろそろ話が始まるという事なので、頭を切り替えた。…隣で政宗さんが面白そうに此方を見てくるのがいたたまれないのですが。さっきから、腕をツンツンしないで下さい。…それは私の特権です。

「…では、軍議を始めよう。…猿。」

「はっ!…娘を通せ。」

秀吉さんが外で控えている護衛の人に言う。そうして、襖は開き護衛の方々に引きづられて少女は現れた。

「…早く歩け。」

「…いい加減、独りで歩かせてくれません?歩きにくいのですが。」

少女が不満そうに、此方を見た。昨日の事があってから、また攻撃して来ないように痺れ薬を打ったはずだったがこうもあっさりと平気な顔をされると少しだけ自信を無くす。…一応、丸3日は動けないようにしたと思ったんですけれどねぇ…。

「…っ、お前!」

「よせ、猿。…自分で歩けるのなら、ここまで来い。」

信長様は秀吉さんの咎めを否して、少女に自分で歩けと命じた。流石にに攻撃できる余力は無いと思うが心配なので、彼女をずっと見つめていた。だが、心配は杞憂に変わり、少女は何事も無く、歩いて座った。安土の武将が勢揃いの中で無表情なのは凄すぎますね。
…まあ、私が言える立場では無いのですが。

「さて、話を聞かせてもらおうか。ここからは真実だけ申せ。…貴様は何者だ?…何故、俺達を襲った。」

信長様は少女から一切目を逸らさずに、言葉を紡いだ。その気迫に、こちらが押し潰されてしまいそうな気がした。そして、少女もまた瞬きすらせずに無表情を貫きながら話し出す。

「…教えられません、契約に反しますから。」

少女はただ、淡々と答えた。その言葉に辺りは静寂に包まれた。


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