第21章 情報の開示
「…なんだと?貴様…。」
信長様が険しい顔で少女を見る。少女は無表情のまま淡々と述べた。
「…教えられませんと申しました。…私が依頼主との契約を破る訳にはいきません。」
「…依頼主だと?」
「…ええ、ですから無理です。」
信長様の質問に淡々と返す彼女にいい加減にキレそうになっている、秀吉さん。…震えていますよ、まずいかもしれません。私がこの後起こる出来事に頭を痛めていると、光秀さんが少女に話しだした。
「…一つ質問をしていいかな?」
「…どうぞ。」
「…そんなに、警戒するな。別に変な事を聞こうとしている訳ではないさ。俺の質問に【はい】か【いいえ】で答えてくれればいい。」
「…はぁ、答えられる範囲であれば。」
「クックックっ…では早速、聞こう。お前に依頼したのは【秋雨】と言う男か?」
「………っ!?」
光秀さんにそう聞かれた途端、目を見開いて光秀さんを見る少女。表情から察するにかなり驚いている。少女は少し顔を下に向けた後、真っ直ぐ見つめて答えた。
「…はい。」
「…ふむ、やはりか。…お館様、この件の黒幕は私が調べていた、間者を放った者と同一人物だと思われます。」
光秀さんは信長様に頭を下げて話しだした。信長様はニヤリと笑って、話を続けるように促した。
「…なるほどな、続けよ。」
「…はっ、先日捉えた間者に白状させましたところ、【秋雨】と名乗る男に雇われたと申しておりました。恐らく、この娘も同じような者かと。」
「…なるほどな、俺の庭で随分と暴れてくれたようだが、漸く尻尾を掴めたか。…それから、娘。俺の質問にも【はい】か【いいえ】で答えろ。……お前は、鋼牙の者か?」
「………。」
その質問に、室内の緊張感が高まる。皆さん、彼女が変な真似をしようものなら、即刻叩き切ってやるって目をしている。殺る気満々ですね…。一方の少女は無言のままで、信長様を見続けている。そうして、見つめ合って漸く彼女は話しだした。
「…はい。」
その言葉に部屋中に緊張が走る。皆さんが刀を構えて、警戒体制に入る。そして秀吉さんが刀を構えて、彼女に斬りかかろうとするのを鶴の一声が止めた。
「…下がれ、猿。その娘には聞きたい事がある。」
「ですが、こいつは鋼牙なんですよ!それに、また襲われるかもしれません!」
秀吉さんは少女から集中を一切離さず応えた。