第20章 寺と鎖
私は驚いて見ていた三人に微笑んだ。すると、信長様が突然笑い始め、秀吉さんが怒り出した。…炭明君がずっと目を輝かせて此方を見てくる。凄くいたたまれない気持ちです。
「クックックっ…しのぶ、良くやった褒美をやろう。」
信長様が愉快そうにしながら私の下にやって来た、秀吉さんと炭明君も近くに来た。
「…うーん、じゃあ診療所の設備の増加をお願いしますね。」
「…クックッ…よかろう、好きなだけ申せ。」
そう言うと、とても愉快そうにに笑った彼。そんな中、今にも火山が噴火しそうな人がいた。予想通りの人である。
「…し〜の〜ぶ〜!…お前なぁ…!」
かなり怒ってらっしゃる秀吉さんがいた。…そんなに怒られるようなことしただろうか?私が苦笑いで彼を見つめていると、呆れたような視線を向けてきた。
「はぁ……怪我はしてないか?」
「ええ…まあ。攻撃を避けてばかりでしたし。ふふっ…秀吉さんと出会った時もそうだったでしょう?」
そう言うと彼は呻き声をあげ、今度は肩を落として話しだした。
「…本当にお前は口が達者だなぁ…。あのなぁ…俺が言いたいのは、一人で突っ込むなって事だ。」
「…!」
突然の言葉に私は理解が追い付かなかった。…そうでした、此処はもうあの場所では無い。ずっと、最前線を駆ける事が私の役割だと思ってましたから。一人で戦う事が癖になっていました。私は、彼の言葉になんて反応すればいいのかわからなかった。困ったような顔を向けると、彼はニッコリと笑った。
「そんな迷子の子供みたいな顔をすんなって。…ただ、笑って心配掛けましたっていつもみたいに笑っていればいい。あんまり無理するなよ?お前は何か放っておけない。」
そう言って彼は私の頭を撫でた。それが何故だがくすぐったくて、私は彼の手を払ってしまった。
「…ふっ…何でもかんでも独りでやろうとするな。ちゃんと、周りに頼れ。…だから、そんな困ったように笑うな。」
「そ、そうですよ、秀吉様の言うとおりです!…俺は今回役に立たなくて駄目だったと思いますけれど、次はちゃんと役に立ってみせます!…だから、そんな顔をなさらないで下さい。」
私はこの時、自分が笑えていない事に気づいた。あの、炭明君も気付いてしまうのならきっとひどい顔をしているのだろうと思う。姉を真似たくせに、なんて体たらくだ。本当に情けない。