第20章 寺と鎖
ブォォォン…!
少女が右手を振ると異常な速さで、此方にやってきた鉄球。それは真っ直ぐに信長様の方へ行く。それを確認すると、信長様はニヤリと笑って、一歩下がった。…下がったくらいじゃあれは…そう思った時に秀吉さんが信長様の前に出てきて刀を抜いていた。
ガチャン…!
「…信長様、今です!」
「良くやった、猿!」
鉄球の鎖を自身の刀に絡みつけ、叫んだ秀吉さん。そして、少女に向かって刀を構えて走り出す信長様。そうか、いくら速い鉄球でも、動きを止めてしまえば攻撃できない。…秀吉さんって頭回りますよね、本当に。
私は感心しながらも彼が作ってくれた機会を無駄にしないように攻撃を仕掛けようとした。あとちょっとで、信長様の刀が振られようとした時だった。
「…いい加減、離してください。」
「……ぐっ!!」
次の瞬間、少女は絡まれていた刀ごと鉄球を秀吉さんから取り上げた。…一瞬で…一体どれだけの力を持って…。私が驚いていると、信長様の刀は鉄球の鎖によって止められていた。
ガキィィィィ…ジャリッ…
信長様は段々と力を入れている様に見えるが少女は無表情でそれを防ぐ。その様子を間近で見て、信長様が呟いた。
「…貴様、本当に女か?…力は男と変わらないでわないか…。」
ジャリ…ガッッ!!
「………。」
…ザッザザッ…
「………ちっ。」
少女は鎖を上げている腕を更に伸ばして、信長様の刀を弾いた。その反動で信長様がよろつく。少女はその空きを見逃す事はなく、無慈悲に鎖を振るう。
ガキィィィィ…ジャラ…
変わった形をした刀と鉄球の鎖が絡んだ。
「……次から次に出てきますね。」
少女は無表情にその防いだ相手を見る。
「…ええ、ごめんなさいね。邪魔するようですけれど、この人が死なれると困るので。」
私はニッコリと彼女に笑い掛けた。警戒と集中を極限まで高めながら。
「…そうですか、どっちにしろあなたも退いて貰わないと困ります。」
少女は呟いた、ただそれが当たり前であるかの様に。
「…そう、じゃあ私も久々に本気で行きます。…御て柔らかにお願いしますね。」
ジャリィ…ガッッ!!
鎖と刀は不協和音をたててとかれる。それは、ある少女達の戦いの始まりを知らせるような音だった。
「…それは、無理です。」
「…あらあら、残念です。」
銀と蝶の戦いが始まった。