第20章 寺と鎖
「…くっ、…!」
ズザァァァァ!
秀吉さんが体を縮め、何とか回避をしたが…その後に刀を構えている炭明君のもとに鉄球は向かった。
ガキィィィィン!…ジャリっ……ゴゥゥゥ!!
「…ぐっ、…うわぁ!!」
鉄球の勢いを殺しきれず、鎖が刀に絡まった事で刀が引っ張られ、炭明君は空中に投げ飛ばされてしまった。…あの高さから落ちたら致命傷を負う!!
「つ…炭明!!!」
地面に急降下していく炭明君を見て、悲鳴を上げるような声を出した、秀吉さん。私は、久しぶりに呼吸を使って脚力を高め、彼を回収すべく、思いっきり飛んだ。…流石に、鈍ったようで少し遅くなる。全集中の常中はいつもしているが、やはり実戦で戦わないと厳しくなるだろう。
「…ふぅぅぅぅぅ…。」
私の跳躍に地上にいる秀吉さんはとても驚いている様だった。…信長様はあんまりだが。
「…うゎあぁぁぁぁ!」
ガバっ…!
私は彼を空中で捕まえて、一気に降りた。
トッ…
「…ふぅ、流石に鈍りましたか…。」
「…えっ、えっ、え?」
私が肩をすくめていると、秀吉さんと信長様が近くに来た。…炭明君の反応がさっきから面白いのですが。
「…大丈夫か?!」
秀吉さんが慌てて此方に駆け寄ってくるので少しびっくりした。
「…ええ、久しぶりなので心配だったんですけれど、うまく行って良かったです。」
私がニコニコ笑っていると、信長様が愉快そうに笑い、秀吉さんが呆れて何か言おうとしたが、その和やかな雰囲気はこの空間に何者かが入る事により打ち消される。私は、その方向に顔を向けた。
「…っ!…貴方は…!」
ガサガサ…ザッザッザッ…
私が見たのは、あの時の団子屋の笑わない少女。この時代では珍しい部類に入るであろう肩までの短い銀髪を靡かせた、顔の整った少女。…一瞬、思考が飛んでしまいそうになったが、彼女の手元を見てみると、さっき見た鉄球があった。少女はただ無表情で此方を見続けていた。そんな沈黙を破ったのは秀吉さんだった。
「…お前、昨日の…!……その鉄球を持ってるって事は今さっき襲って来たやつだな。…何故、俺達に攻撃してきた。」
意外なことに、秀吉さんは信長様に攻撃されて激昂するのでは無く、落ち着いて対処話しだした。…かなり意外です。
「……邪魔です。」
少女は無表情で呟き、攻撃体制に入った。