第20章 寺と鎖
どれほど時間が過ぎだろうか?辺りは森林が囲む寺に着いたのは、お昼過ぎだった。お腹が減りつつも、信長様に促され降りてみると、空気がとても美味しい場所と感じた。
「…此処が、件の寺か。」
「はっ!…情報によると、境内の近くの森林にて見つかったと。」
「案内せよ。」
「はっ!」
そうして私達は、秀吉さんに着いていった。歩みを進めるたびに、段々と血の匂いがしてくる。…それも、かなりの数だ。
「…此方の茂みの奥で御座います。…寺の付近の森で死体が散らばっていましたので、死体は此処に集めて置きました。」
「…此れは随分と惨い殺し方だな。」
そう、信長様の言うとおり、死体には一貫性がなく、足がない者や腕がない者、そして頭を潰されているものが殆どだった。死体の顔を見てみると、怯えた様子から相当な手練と見える。
「…此れは、私怨によるものでしょうか?」
炭明君が秀吉さんに聞いた。
「…いいや、今朝見つかったものだからな。余りに情報が少ない。…断定はできない。」
「…凶器は恐らく鈍器でしょうね。それも、鉄球位の重いやつです。」
私はボソっと呟いた。その言葉を聞いて、秀吉さんがこちらを向く。
「…?何故そんな事が分かるんだ?」
「嘗ての私の知り合いに、鉄球を武器に戦う人が居ました。この方達は似たような傷痕がついていますので、恐らく。」
そう、此れは間違いなく鉄球で殺された痕だ。悲鳴嶼さんの戦いを幼い頃によく見てましたから。傷痕がそっくりです。
「…なるほど、武器が鉄球の者か。よし、猿、急いで戻り、城下や領地に鉄球を持つ者を調べろ。」
「はっ!」
えっ…もう戻るのですか!…せっかくゆっくりしようと思ったのに…。
私が残念に思っていると何処からか音がした。
チャリ…チャリ…
この音は…鎖?何で、急に…一体何処から…。
ゴォゥゥゥ…!
次の瞬間、鉄球が目の前にやってきた。
「…っ!?」
「…しのぶ、お館様っ!!」
間一髪でそれを避けて仰け反る私と信長様。
「…っ、姫様!お館様!大丈夫ですか?!」
炭明君が此方を見て叫んだ。私は鉄球が戻っていった方向に警戒をして、叫んだ。
「…何とか、っ…それよりまた来ます!!」
ゴゥゥゥ…ゴゥゥゥ…!!
今度は秀吉さんと炭明君狙うかのように方向転換し、二人に向かっていった。