第19章 鋼と牙を持つ者
信長様にそう言われると、炭明君は嬉しそうに微笑み、話しだした。
「任せてください!お館様は必ずお守り致します!」
その元気な声に、思わず笑ってしまう私達だった。
そうして馬を走らせている内に川が流れている所の近くまで来た。
「…うむ、此処まで来たのか。暫しの休憩を取ろう。」
「はっ!」
どうやら信長様と秀吉さんの話を聞く限り、もうそろそろで着くらしい。話していると、本当にあっという間に感じる。私は秀吉さんの許可を取り、水筒に水を汲もうと思って、川の近くに降りた。丁度、炭明君も同じ事を考えていたみたいで、行動は同じだ。
「…炭明君も水汲みですか?」
「はい、なくなってしまったので。」
たわいない話を彼としつつ、水筒に水を入れる。
「…炭明君、ずっと気になっていた事があるんです。」
「…はい、何でしょうか?」
「あなたのお家の家業って何ですか?…男の子なのに料理がとてもお上手ですから不思議に思って。」
そう言うと、彼は困ったように笑いながら話しだした。
「…正直に言うと、前の家族の事は思い出したくないんです。それと、お考えの通り炭焼きを生業としていました。何せ、体に染み付いてますから。」
「…前の家族とは?」
「…はい、俺は秀吉様の養子なんです。」
「…っ!」
突然の言葉に一瞬思考が追い付かなくなる。
「…俺は、数年前に家族が殺されたんです。村に現れた、敵国の兵士によって。…俺はその時炭を売った帰りで、吹雪の中だったので知り合いのおじさんに泊めさせてもらいました。後から聞いた話ですが、突然家に押し入ってきた男たちによって家族が殺されたと聞きました。」
炭明君が顔を下に向けながら話した。
「…その兵士達の数人は、癇癪持ちだったようで、止めに来た他の村人たちも皆殺しでした。…俺が帰ってきた後は辺り一面、血の海になっていてあの時の俺はもう、死にたいと思いました。」
「…っ。」
「…そんな時に駆けつけてくれたのが、信長様で行く所が無いのなら俺の下での働いてみないかといわれました。…俺は、その言葉を受け入れ信長様の下で働くこととなりました。ですが、元々は炭焼きの家の生まれですので、身分の問題から豊臣家に養子として入れてもらえる事となり、こうして織田家に仕えさせて頂いているのです。」
このことから、考えて彼の今の名字は…。