第19章 鋼と牙を持つ者
「それでは、行くぞしのぶ。」
「はい、………絶対に、落とさないで下さい。」
「クックックっ…俺がその様な失態を犯すわけがない。しっかり捕まっておれ。」
「「「…ご武運をお館様。」」」
信長様は私と同じ馬に乗って、馬を歩かせた。…正直、また一緒に乗るとは思いませんでしたが、何せ私の身長が低いので、うまく乗れるか心配だと秀吉さんが言ったものですから仕方なくですよ。……はぁ。ちなみに今日は着物ではなく、動きやすいようにと鬼殺隊の隊服を着てきました。…此れも、秀吉さんの配慮です。
「…そんなに気を落とすな、しのぶ。今回はお忍びの旅だ。かなりの少人数だが、精鋭を連れている。そんなに心配するな。」
隣を馬で走っている秀吉さんが私に向かって言う。隊服を着せくれたので有り難いと思っていますけれど…。
「…心配して落ち込んでいるのではありません。…帰りたいから落ち込んでいるんです。…はぁ。」
…本当に頭痛のしそうな旅ですよ。私がどんよりとした雰囲気を纏っていると後ろから声が聞こえた。
「そんな顔をなさらないで下さい、しのぶ様。今日は俺も護衛につかせて頂きます。よろしくお願い致します。」
「…あぁ…お久しぶりです、炭明君。この間は健康診断のお手伝い、有難うございました。とても、助かりました。」
お久しぶりの登場の炭明君ですが、実は健康診断のお手伝いを進んでしてくれたのです。姫様の為になるならと言ってくれました。…とても良い子ですよ。
「い、いいえ!姫様にお礼を頂けるなんてとんでも御座いません!…俺も、色々勉強させて貰っていますから。…また、診療所に行っても良いですか?」
「…ふふっ…勿論ですよ。…毎回、差し入れありがとうございます。」
「喜んで頂けて何よりです。また、焼き菓子を作って持っていきますね。」
そうなんです、この会話の通り、炭明君は本当に料理が上手で特に火を扱うものはもう絶品なんです。…炭焼きの家系でしょうか、やっぱり…。竈門って名字ですもんね。…こればっかりは聞かないと分かりません。…後で、二人のときに聞きましょうか。
「…ありがとうございます。また、いらしてくださいな。」
私が笑っていると、信長様の愉快そうな声が頭上から聞こえた。
「…なるほど、炭明はあの時の礼が出来たのだな。…炭明、貴様のこの旅での活躍を期待している。」