第19章 鋼と牙を持つ者
「…分かりました、行きます。」
物凄く嫌な顔をしながら答えたのを秀吉さんに怒られたけれど、仕方が無いではありませんか!正直言って、信長様と一緒なんて…。
「信長様、もう一人護衛を付けても宜しいのでは?しのぶ様は姫様ですし…。」
すると今度は、三成君が信長様に提案をした。
そうですよ。そもそも私、姫様って設定なんですから。設定を無視しないでくださいよ。
「お館様、その方がよろしいと思います。如何でしょうか?」
秀吉さんが信長様に更に言う。
「…猿、貴様がそれを言ってこの間は戦に行くかと思う人数にしたではないか。」
「…うわぁー。それはないぜ、秀吉。流石にやり過ぎだ。」
私も呆れて言葉も出ません。…信者、恐るべしです。
「お館様はお命を狙われる存在だぞ!その位当然だ!」
…当然で動かされる、兵の皆さんの身にもなってください。呆れたような空気が漂っていると家康さんが話しだした。
「…秀吉さんはいつもやり過ぎだけれど、俺ももう一人くらい護衛は近くにいたほうがいいと思う。」
…確かに別に平気ですけれど、人数が多いと信長様を守ってくれる方が最低でも私以外に一人必要です。
「…我々は仕事で手が空いておりませんので、竈門君に護衛をしてもらえばよろしいと思います。」
三成君がまた新たに提案を出した。
「…なるほど、彼奴なら腕はそれなりにたつな。…俺は賛成だぜ!」
政宗さんがその案に乗ってきた。
「俺もその方がいいと思います。…しのぶだけじゃ何処までやれるか心配です。」
「…はい?私が負けるとでも?」
また、家康さんと私の睨み合いが始まった。
「おい、お前らこんな時に…」
「…と言いたいところですが、正直私も戦っている最中はお守りできるかどうか分かりません。もしものときの為にお願いします。」
私は秀吉さんの言葉を躱し、信長様の前に歩いてきて、深く頭を下げた。
「…しのぶ、お前…。」
秀吉さんが驚いたように呟いた。
「…なるほど、皆の気持ちは分かった。…猿、炭明を此方に呼べ。」
「…はっ、直ちに!」
そうして話は進んで行き、信長様の道案内役に秀吉さん、そして護衛は炭明君と何故か、姫の私。
…まあ、戦えますけれど、あんまり人間相手に刃を向けたくないんですよね。
少し、憂鬱な気持ちになりながらも私は移動の準備を陽と始めた。