第19章 鋼と牙を持つ者
男のすぐ後ろに少女は佇んでいた。突然の事に男は声が出ずに、ただ目の前の怪物に震える。その少女は、
整った容姿をしながら、何処までも冷酷な目をして男を見ていた。
「…ひぃ!た、た、たすけてくれぇ…!頼む!!」
少女に向かって土下座をして謝る男に少女は冷たい目を向けた。
「…そんな事を言うならば、最初からこのような事をしなければ良かったのでは?」
「…し、仕方が無かったんだよ!引き受ければ、お金が貰えるって言うから!!」
「…一時の欲に流されてそのような事を言うなんて、本当に何処までも救いようの無い人ですね。…女相手に何十人で攻撃を仕掛けてくる時点で終わっていますが。」
少女は鎖を鳴らし、鉄球を振ろうとする。
「…ま、まっ…まて…!は、話を…」
グシャァァァ!!
頭だったものが跡形もなく潰れ、見るも無残な死体が残る。
「…そもそも、あなたが何を言おうとあの人に手をだそうとした時点であなたに延命の余地はありませんよ。」
シャラ…
鎖の音が暗い森に響き少女はその場から離れていった。
「…お館様、緊急の案件です!」
丁度、大広間で朝餉を食べていた私達の会話を割くように、遅れてやってきた秀吉さんは信長様の前に膝をついた。
「…猿、何事だ。」
信長様は同様せずに秀吉さんを見つめた。
「…はっ、今朝城下の見回りをしていたものが、耳にしたのですが、近くの寺がある森で大量の死体が発見されたとの事です。…その数、およそ二十人前後かと。」
「「「「…?!」」」」
「…光秀、昨夜に不審な動きは城下にあったか?」
信長様は光秀さんに視線を向けた。
「…はい、ある近隣の大名が安土に間者を放っておりましたところを確保致しました。…白状させましたところ、間違いなく【鋼牙】関係かと。」
「…クックックっ…漸く尻尾を見せたか。光秀、また暫くの情報収集を任せる。それから、秀吉。その事件の場所に案内せよ。」
信長様は立って、光秀さんと秀吉さんに命令した。
「「御意」」
「それから、しのぶ、貴様も来い。今日は俺の護衛をせよ。」
突然、話を振られて固まる私。
「はぁ?何言って…!…診療所はどうするんですか?!」
「…臨時の休業日だ。俺に暫し付き合え。」
昨日は定休日だったのに、今日もって…。…だから、秀吉さんその圧は止めてくださいって。