第19章 鋼と牙を持つ者
「…ふふっ…今は何ですか?」
私は変な気分になったのを隠すように彼を見た。
「…それは教えない。」
「あら、ケチですねぇ。」
「…何とでも言え。…(ボソっ)教えられるわけ無いじゃん。」
私は彼が何かを言った様な気がしたが気に留めずに歩いていていた。
「…で、悩みあるんじゃないの?」
彼が、話題を変えて私の方を向いてきた。
「…分かっちゃいましたか?」
「何となくね…。」
「…そうですか。」
悩みがあると分かりつつも、私が言うまで待ってくれる彼に好感を抱きながら話した。
「…秀吉さんと行った団子屋に不思議な方が居たんです。…私とおんなじ位の女の子です。」
「…はぁ?秀吉さんと行ったの?」
何故か、話の前の部分に食い付いてきた彼。…相談に乗ってくれるのではなかったのでしょうか?
「ええ、まあ、…それが何か?」
「…別に、ただ…………今度は俺を誘って。」
明後日の方向を向きながら言う彼。耳が赤くなっているのを見ると照れているのでしょうか?
「ふふっ…ええ、勿論。家康さんと行きたいと思っていたんですよ?」
そう言うと、彼は目を見開いたあと少しだけ口角を上げた。
「…ならいい、で?話の続きは?」
さっきあなたが中断したのでは?…と思いながら話し始めた。
「…本当に不思議な方で、彼女は笑わないんです。…それが私の知り合いにすごく似ていて。…もしかしたら、私もそうなっていたかもしれなくて…。……あっ、ごめんなさい。変な話をしてしまいました。うっかりです。」
私が困ったように笑うと彼は何故か下を向いてしまった。…何なんでしょうか?
「…笑わないって事と笑うって事は似てると思う。あんたはいつもニコニコ笑ってるけど、周りに女中しかいない時はよく疲れた顔をしてる。…勉強しているときも偶にそんな顔してる。だから、その女は笑う事に疲れたんじゃないの?」
「…笑う事に疲れたですか。家康さんも中々考えますね。」
私は家康さんに微笑み掛けた。
「…此れ言っとくけど、あんたの事も含まれているからね。」
「…はい?」
「…あんただって無理して笑わなくて良いだろって言ってんの。…いい加減分かって。」
「…っ。」
…どうして、こんなにも彼は鋭いのでしょうか?いつもは笑顔で否定する私がどうして、彼の言葉だけは上手く躱せないのでしょうか?