第19章 鋼と牙を持つ者
「…わあ、とても美味しいですね!」
「ふっ…そうだろう?」
「…ふふっ、はい。」
私達はモグモグと団子を食べてお茶を飲みながら、最近あった事について話した。
「…ありがとうございました。」
会計はさっきの少女でした。…お金は勿論、秀吉さんが払ってくれましたよ。その中で彼女をじぃ…っと見ていると、彼女と目があった。
「…あ、あの、何か不手際でも御座いましたでしょうか?」
どうやら勘違いさせてしまったらしく、私は慌てて首を横に振った。
「…っ、違います。ただ、とても綺麗な髪だなぁ…って思っただけですよ。」
そう言うと、彼女は少しだけ目を見開いた。…地雷だったのでしょうか?
「…あっ、もしかして気にしてましたか?…すみませ…」
「…いいえ、そんな事は。…ありがとうございます。またのお越しを心よりお待ちしております。」
彼女は綺麗に頭を下げて見送ってくれた。…やっぱり、無表情でしたけれど。
「…何で、さっきの少女をずっと見ていたんだ、しのぶ?」
秀吉さんが不思議そうな顔で此方を向いてきた。
「…なぜだか、彼女に親近感が湧いてしまって。…なぜでしょうねぇ?」
「…そうか、お節介も程々にしておけよ。」
「…はいはい。」
そうして、私達は安土城に帰り始めた。
その一方で、人通りがほとんどない、空き家と化した荒れ果てた家、…城下では水面下で闇が動き始めていた。
「…めんどくさいなぁ〜。」
青年は目の前に居る交渉相手に不服を漏らす。
「…そう言うな。此れはお前にとっても吉報であろう?何せ、あの魔王に深手を負わせてやれるのだからな。」
交渉相手はまるで子供が夢を語るかの様に、にこやかに話す。
「まあね、母の仇だ。彼奴を殺せるのなら、僕は…いや、俺は何だってするさ。」
青年は瞳を曇らせ、この世の全てを憎むかのような目をした。
「いい心がけだな、■■■■。」
交渉相手がその様に、彼を呼んだ途端に、彼はとてつもない殺気を向け、クナイを顔すれすれに飛ばしてきた。交渉相手の顔の皮膚が切れて、血が流れ出す。
「その名で呼ばないで…。それはあの人のものだ。」
「ああ、済まなかった。非礼を詫びよう、▲▲▲。…今回の件しくじるなよ?」
「…誰に向かって言ってるんだい?…必ず、信長は俺が殺す。」