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戦乱の蝶姫

第19章  鋼と牙を持つ者


「…鋼牙とは、一体何なんですか?」

私は少し首を傾けながら、秀吉さんに聞いた。

「鋼牙というのは、その戦う姿から名付けられている。鋼の様な体を持ち、牙の様な人間離れした腕力と脚力を持つことから名付けられたんだ。…しかし、先の戦で大名達に鋼牙の里が滅ぼされたと噂が流れて来てな。その生き残りがいないか、我々も探しているんだ。もし居るなら、俺達の戦力に欲しいしな。何せ、最強と言われていた民族だ。そう簡単に全滅しないだろう。」

秀吉さんは私の方を向いて、淡々と話した。

「へぇ…案外、この城下にいるかもしれませんよ?その、生き残りの方。」

私が笑いながら話すと、家康さんが身震いした。

「…ちょっと、悍しい事言わないでくれる?…鋼牙が一人でもいるだけで、数百人分の戦闘力を持ってるんだから。…もし、暴れられでもしたら止められるかどうか分からないし。」

「…あら、そうですか。面白そうですのに。…そういえば、やっと此方を向いてくださいましたね、家康さん。」

私はニッコリと彼に微笑みかけると、彼はハッとした顔をしたかと思えば、直ぐに赤くなってそっぽを向いてしまった。……此れは、陽にちゃんと聞きましょうか。

「…ほう、クックックっ…家康、貴様漸く自覚したのか。」

信長様が家康さんの方を見て楽しそうに喉を鳴らした。

「…自覚とは、一体何なのですか、家康様?」

キョトンとして心底不思議そうな顔をしている三成君。

「……お前は、本当に黙っていろ三成。…ややこしくなる。」

家康さんが三成君に向って苦味を潰した顔を向けると、他の皆さんまでニヤニヤとし始めた。…私はこの居心地の悪い空間から早く出たいと思って、箸を進めた。



「…ねえ、陽?」

「はい、何でしょうか姫様?」

私は自室に戻り、陽に早速聞いてみることにした。

「なぜか家康さんが此方を向いて話してくれないのだけれど…。…もしかして、あなたの仕業?」

「…あら、家康様ったらそのような態度を?(ボソっ)……そんな状態では一向に進展しませんのに…。…じれったいですねぇ。せっかく、後押ししようと思いましたのに。」

陽が最後にブツブツと話していたことを私は上手く聞き取れなかった。

「……?何か言った?」

「ふふっ…なんでもありませんよ。…家康様は素直じゃありませんから。」

「……?…変な人よねぇ。」


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