第18章 新たな出会い
患者を問診室にある、布団に運んでもらった。
「…ぐっ…。ゲホっ!!」
患者は私よりガタイのいい、男性だった。不自然ですね、外傷が見当たらない。脈は弱いですけれど。…血を吐いているという事は持病でしょうか?
「…失礼ですが、何方かこの方の持病を知っておられますか?」
「…お前、持病って気付いて…!」
驚いたように私を見る、運んでくれた彼。
「…喧嘩売ってます?私は医者ですよ、この程度造作も無いです。…さっさと教えて下さい。この方を死なせたいのですか?」
私は、驚いている彼を睨んだ。
「…胸を患って居られる。」
「…胸?…てことは呼吸器の障害?…肺でしょうか。…少し胸の音を聞かせてくださいね。」
私は、いつも持ち歩いていた聴診器を取り出した。
「…っ聴診器。」
「…?あなたは…?」
やはり眼鏡を掛けた彼を何処かで見た事ある気がする。…そんな事よりも患者です。私は、横たわっている患者に聴診器を当てた。
「…余り、空気が入っていない。…てことは、肺の病気。……でも、情報が足りない。他に、何か変わったことは?」
「…よく、胸を押さえて苦しんでいた。…あと、さっきした様な吐血もだ。」
運んで来た彼が丁寧に答えてくれた。
「…なるほど、これは間違いなく肺腫瘍ですね。」
「…はいしゅようって何だ?」
「肺腫瘍というのは、体の中の器官である空気の入れ替えをする肺の中に腫瘍という異物ができることを言います。…この状態はとても危険です。呼吸音を聞く限り、持って数カ月かと。薬だけでは。」
私の言葉を聞くと運んで来た彼が突然胸倉を掴んできた。
「おい、どういうことだ!持って数カ月ってなんだよ!…頼むよ、助けてくれ。……大切な人なんだ。」
彼は悲痛そうな、顔を浮かべて私を見てきた。私は胸倉を掴んでいる彼の手を払い、話しだした。
「話、最後まで聞いていましたか?…私は言ったはずです。…【薬だけでは】と。」
彼は私の言葉を聞くと弾かれたように話しだした。
「…それって、助けられるって事か?!本当に、助けられるんだよなぁ!」
「…ええ、手術を行えば、恐らくは。…ですが、今は準備をしている最中でして、手術は無理なのです。ですので、来週辺りに来てくださればできると思いますよ。」
私の言葉をを聞くと彼は涙を流しながら微笑んだ。
「…すまねぇ。」