第17章 幼き日の思い出
「でも、ちゃんとわかりあえたではありませんか。」
そう言うと、そっぽを向いてしまった彼。本当に素直じゃありませんねぇ…。すると、陽が私の肩を叩いて話した。
「…姫様、家康様の耳をご覧下さい。赤くなっていますでしょう?この場合は、照れているのですよ。」
「…なるほど、流石幼い頃に一緒にいただけあって癖も見抜いてしまうのね。」
「…陽!こいつに、変な事吹き込まないで!」
真っ赤になって叫びながら、私達の方を向く彼。私はおかしくって思いっきり笑ってしまった。
場所は変わって、大広間で夕餉を食べていた。
「…で、また仲直りは出来たのかよ。」
政宗さんが覗き込むように聞いてきた。
「ふふ…はい、勿論。ていうか、喧嘩していたのは私では無いんですけどね?…昼間はお騒がせしました。」
「クックックっ…いいや、俺的には面白かったから、イイぜ?」
そう言って、政宗さんは楽しそうに笑った。
「ふふっ…ありがとうございます。…それから、信長様も。」
「…クックックっ…俺はついでか。」
とても愉快そうに笑う信長様。
「いいえ、信長様のお陰でこのような事ができたのですから、今回、一番感謝しているのはあなたです。本当にありがとうございました。」
「…いいや、感謝しているのはこちらの方だ、しのぶ。家康の心を救ってもらい、本当に感謝している。大儀であったな。」
此れは、恐らく信長様の最大級の褒め言葉なのだろう、私は満面笑みで答えた。
「ふふっ…ありがとうございます。」
「さて、元の性格に戻った陽はどうだ、家康?」
光秀さんが面白そうに、家康さんに聞いた。
「どうもこうも、無いですよ!…夕餉が終わったあともまた説教ですよ。はぁ…。」
家康さんが心底嫌そうに言った。…でも、少し嬉しそうだった。
「…それは、それは良かったです!」
「…もう、全部あんたのせいだからね!責任取ってよ!」
家康さんが此方を親の仇を見るような目で見てきた。私は何かいい返そうとしたが、遮られてしまった。
「…………あんたのおかげだ、ありがとう。」
そっぽを向いて、小さく呟いた家康さん。
「…いいえ、お互い様ですよ。…それと今度はちゃんと【誰かに頼って】くださいね?」
「…うん、分かってる。」
そうして、夜は過ぎて行き、一つの絆が再び蘇ったのだった。