第17章 幼き日の思い出
バァン…!
「…どうしたしのぶ、貴様、軍議中に割り込んで来るとは一体何用だ?」
「信長様…暫しお時間を頂けないでしょうか?…其処の耳無し野郎…いえ、家康さんにお願いしたい事があって来たのですが。」
「お願いだと?…何故このような場所を選んだ。」
信長様の鋭い視線が刺さった。
「…此処で言っておかないと、また逃げられると思ったので。予防策です。」
「…しのぶ、お前なぁ…!」
秀吉さんが立ち上がろうとする。
「…待て、猿。」
「…お館様!」
「…家康に用があるのだろう、申してみよ。」
「はい、ありがとうございます。…家康さん、軍議後に私の部屋に来てください。」
「…嫌って言ったら?」
「…いつまでも逃げられると思わない方がいいですよ。ちゃんと、自分の過去と向き合ってください。」
「…なんで、あんたにそんな事言われなきゃいけな…」
「…家康、いい加減にせよ。」
家康さんに待ったをかけたのは信長様だった。
「…信長様。」
「いつまでも、通らないで済む道などない。お前はいつまで立ち止まっている気だ?…さっさと前に進め。」
「……………分かりました。……いいよ、あんたの部屋に行ってあげる。」
家康さんはとても不本意そうに此方を見てきた。…本当に頑固な人ですね、陽の気持ちが痛いほど分かりますよ。
「分かりました、必ずですよ。……軍議を邪魔してしまい、申し訳ありません。大変、失礼しました。」
私は深く頭を下げ、大広間を出た。…あとは、あの二人次第ですかね。…家康さんがちゃんと聞いてくれれば良いのですが…。
「はぁ…上手く行くのか心配です。」
私は不安に思いながらも、二人の行く末を見守ることにした。
「…で、話って何?……早くしてくれる?」
絶対零度の目で陽を見つめる家康さん。
「家康様、まずはあの時お助けすることができず、申し訳ありませんでした。」
深く土下座をする様に頭を下げた陽。
「…別に、あんたに謝られても嬉しくないんだけど…とっとどっかに行って…」
「っ…家康様はいつもそうです!自分のことばっかりで、私の話をお聞きになって下さらない!!」
「………っな!」
突然、陽が家康さんに歯向かったので、彼はとても驚いたような顔をした。