第17章 幼き日の思い出
すると、家康様は此方を睨まれて叫ばれました。
『今川の家臣達が言ってた、全部あんたの差し金だって!…俺を慰める振りをして笑っていたんだろ!!』
『…私はそんな事は決して…!』
『煩い、黙れ!もううんざりなんだよ!俺の前に姿を見せるな!!…消えろ!!』
家康様は今川の家臣達が私の差し金だと言っていたとおっしゃいました。私は、なんのことかさっぱり分からなくて、何度も家康様に弁解しようと思いました。ですが、家康様には聞く耳を持って頂けず今に至るというわけです。
「…一言、言っていい?」
「はっ、はい…。どうぞ…。」
私は立ち上がって、彼女を見つめた。
「今川の家臣ってそこまでクズだったんですね。まあ、予想はしてましたけど自分に文句を言う人を牢屋にって何処の時代の方ですか。…そもそも、ここ戦国時代でしたね。あと、家康さんも困りものですよ。話を聞かないってそれって人としてどうなんですか?耳が機能していないのでしょうか?あれは飾りですかね?そもそも、これの原因は今川義元のせいなのでは?ソイツさえ居なければ、全て丸く収まったのではないでしょうか?」
私はイライラが募りすぎて早口で話してしまった。
「あっ、あの姫様…?」
「はっ…!ごめんなさいね、私、怒ると敬語で早口になるのよ。」
「はっ、はぁ…。そうで御座いましたか。」
「それから…陽!」
「はっ、はい!」
「あなたはもっとはっきりとあの捻くれ野郎に言ってあげて!あの人は優しい言葉には決して靡かない人だから。」
「しっ、しかし、私は女中ですし…。」
「嘗て、女中なのに家臣に反発したのは誰?…言ってやって、私はずっとあなたの味方だったって。」
私の言葉を聞いて彼女は涙を流した。
「も、申し訳ありません、女中の私がこのような私事に姫様を巻き込んでしまい…。」
「いいの、ちょっと待ってて、あの耳無し野郎を呼び出す事にするから。(ニコっ)」
「…えっ?ひ、姫様?」
そう言って私は、家康さんの働いている場所に向かった。確かこの時間は軍議をしているはずだ。私は、大広間へと向かった。
「ど、どうなされました…姫様?信長様は今、軍議中でして…。」
「…家康さんを呼んでください。…今すぐに!」
「はっ…はい!!」
家臣の方が私を怯えたような目で見つめていた。