第17章 幼き日の思い出
陽がとても辛そうな目で家康さんを見ていた。すると、家康さんは騒ぎに気づいたようで、目を開けて辺りをキョロキョロすると、陽と目があった途端に突然目を見開き、次第に険しい顔をした。
「…何、いきなり主人に伺いもせずに襖を開けるなんて、無礼だとは思わないの?」
家康さんが今まで見たことも無いような顔で陽を睨んでいた。
「…っ、申し訳御座いません、家康様。緊急でしたので…。」
「あんたに名前を呼ばれたくないんだけど、いい加減消えてくんない?……目障りだから。」
家康さんはこちらが震えるような絶対零度の目で彼女を睨んだ。
「…っ畏まりました、失礼致します。」
そう言って、陽は襖を閉めて歩いて行ってしまった。ていうか、そもそも…。
「ちょっと、家康さん?あんな言い方は無いでしょう!…陽は私を探しに来てくれただけなのに。」
私は家康さんを睨んだ、流石に彼女にあんな態度を取られて黙っている訳にはいかない。
「…うるさい、あんたには関係ない。…此れは俺と彼奴の問題だ。部外者は引っ込んでろよ。」
家康さんはこちらが震え上がる様な冷たい目をして睨んできた。…だったら、なんで。
「…だったら、なんでそんな泣きそうな顔をしているんですか!」
「……っ。」
まるで、差し伸べられる手、全てを拒絶するかの様なあの目。
「…家康さん、あなたは…。」
「うるさいっ!ほっといてくれ!…あんたもいい加減、出て行ってよ!!」
突然叫ばれて、私は言葉を呑んだ。
「…分かりました。無神経なこと言ってすみません。」
そう言って、私は家康さんの部屋を出た。あの目は、何も映らず、何も信じていない目。彼と同じ目をかつてのカナヲもしていた。…家康さんあなたは一体何を抱えているんですか?…もっと周りに頼れって言ったのはあなたじゃないですか。何なんですかもう…。
私の気分は最悪なものとなった。