第16章 額に傷を負った僧侶
ドタドタ…
「家康さん、もう夕餉はいいのですか?」
「…うん、あのうるさい中でずっと食べられないし…。それより、あんたはいいの?全然食べてなかったみたいだけれど。」
「ああ、私は食が細いのであまり食べられないんです。」
「…ふーん、そうなんだ。」
毒を食べていたせいで余り食欲が回復していないんですよね。早く、体調を万全にしないと。
「…ところで、どこに向かっているんですか?」
手を引っ張られて歩いているので、今は彼におまかせ状態だ。
「俺の自室。…勉強するんでしょ?……今日の蜂の毒の抜き方、教えて欲しい。」
「…ふふっ、はいはい、分かりましたよ。」
私達は談笑しながら、彼の私室へ向かった。
「へぇ…結構広いのですね。」
「そう?…薬草とか、医学書とか置いてると結構狭くなるよ。……ここに座って。」
「ふふっ、はーい。」
私は彼の私室に到着し、部屋をグルッと見た。…かなりの薬草が貯蔵されています。医学書とかも積まれてますし。私は、久しぶりに見る沢山の薬草に心を踊らせていた。
「…そんなに、薬草とか見てて楽しい?」
「ええ、とっても。家康さんは違うのですか?」
「…いいや、薬を煎じる事は好きなことだから。ここに居ると、落ち着く。」
「…そうですか。…無駄話をしてしまいましたね。早速始めましょうか。」
「…うん。…よろしく、しのぶ先生。」
少し、意地悪な顔で口角をあげた彼。
「…ふふっ、先生と呼んでくれるからには、頑張らないといけませんね。」
こうして、私と家康さんの薬の勉強会第一回目が始まったのだった。
「蜂に刺されると、まず激しい痛みが出現し、赤く腫れます。これはハチ毒の刺激作用によるもので、初めて刺された場合、通常は1日以内に症状は治まります。しかし、2回目以降はハチ毒に対するアレルギー反応が加わるため、刺された直後からジンマシンを生じたり、刺されて1~2日で強い発赤、腫れを生じたりします。この反応には個人差が大きいですが、ひどい場合は刺されて30分~1時間で意識消失や血圧低下などを生じて、死に至ることがあります。これはアナフィラキシーショックと呼ばれる症状で、ハチ刺されによる死亡事故はこの特殊なアレルギー反応によるものです。」
「…なんで、血と毒を抜いたの?通常は一日以内に収まるんでしょ?」
「今回の男性の場合は…」