第16章 額に傷を負った僧侶
その後、ある程度見たところで私達は城への帰路についた。城門まで歩いていくと、もう夕方になっていていて、暗くなり始めていた。暗くなり始めた辺りを見回しながら、橋のところまで着くと其処で待っていたのは秀吉さんだった。…流石にバレたら恥ずかしいので、手は離しました。
「…漸く、二人共帰ってきたか。で、仲直りはちゃーんと出来たか?」
秀吉さんに聞かれて、家康さんと私は顔を合わせ、私は少し口角をあげて笑った。
「…ふふっ、勿論。ね、家康さん?」
「…まあ、そうなんじゃないの。」
「素直じゃないですねぇ…。」
「……うるさい、しのぶ。」
私達のやり取りを見ていて何か納得したような顔をした秀吉さんは、ニッコリと笑った。
「…行く前の、険悪な雰囲気と随分と違うな。…何かいい事でもあったのか、しのぶ?」
「色々と面倒なことがありまして…。まあ、でも…家康さんがどういう人なのかは分かりました。…ありがとうございます、秀吉さん。」
私はニッコリと秀吉さんに微笑んだ。
「礼は信長様にもな、あと政宗にも。…あいつ、ずっと心配してたんだぞ。」
「…信長様は分かりますけど、政宗さんもですか。」
私は驚いた顔で秀吉さんを見つめた。
「…ああ、今日の家康の仕事は殆ど政宗がやったんだ。…普段からあれくらい働いてくれればなぁ…。」
そう言って、彼は肩を落とした。
「…それは、多分無理。」
「…ふふっ、確かにそうですねぇ。…お礼しなければいけませんね。」
私達3人は談笑しながら、城の中へ入っていった。聞くところによると、もう夕餉もできているみたいだ。政宗さんの手料理らしい。…意外と凄いですよねぇ、あの人。
「…おう、漸く帰ってきたか、しのぶ。…家康とはどうなった?」
開口一番に聞いてくることがそれですか。私は、溜息をついたあと、彼に向き合った。
「…ふふっ、あなたのお陰で仲直り出来ましたよ。…ありがとうございます、政宗さん。」
私は料理を運んで来ている政宗さんに微笑んだ。
「…おっ、バレちまったか。…仲直り出来たんなら、良かったな!」
そう言って、彼は私の頭を撫でた。…この人、人の頭を撫でる癖があるんでしょうか。
「ほら、ぼぉーっとしてないで、早く席に付け。夕餉の時間だ。」
「はいはい、分かりましたよ。」
私は彼に促されて、また家康さんと隣の席になった。……政宗さん、あなた仕組んでますよね?