第5章 【お館様】
「ぐぅぅっ…!がっ…!!っ…息が…でき、な…。」
バタンっ!!
その兵士の方は泡を吹きながら藻掻く様に倒れました。人を殺そうとするからです。自業自得ですよ。まあ、私も人のことを言える立場では無いのですが。さて、とっとここを抜け出しませんと!
「貴様はっ…?」
面倒くさいですね。話は後ですよえいっ!取り敢えず、寝ててください。私は、その男性の背後に瞬時に周り、首に手刀した。乱暴ですって?仕方ないじゃないですか。このままだと、炎の中で説明しないといけません。だから、私の行為は正当ですよ!
「がっ、…!」
ドサッ!
倒れ込んだその男性を俗に言う、お姫様抱っこをして、寺から脱出する。近くの木の幹にでも飛び移りましょうか。私は呼吸で足に力を貯めて、一気に燃え盛る寺から抜け出し、近くの木の幹に着地した。
トッ!
…本当に身長差が嫌になりますね。重いです、凄く。甘露路さんなら余裕で持てそうですけれど…。…………この人、冨岡さんと同じくらいの身長じゃないですか?此れなら、さっきの少年を抱えて移動した方がずっと楽ですよ。まったくもう、嫌になりますね。
「私、人助けは得意だと思っていたんですけどね…。」
面倒くさいことこの上ないです。しかし、引き受けたものは仕方がありません。ちゃんと【任務】を遂行しますよ。取り敢えず、私はさっきの少年の所へ男性を抱えながら移動する。……さっきから木の幹がミシミシいっていますけれど、大丈夫でしょうか…?
シュタっ!っト!
漸く、さっきの少年の所まで戻ってきました。後ろを振り返ってみると、寺がゴウゴウと随分な勢いで燃えてます。……そもそもこの抱えている男性はどちら様なのでしょう?うっかりした事に、この男性が何者かを知らずに、勢いで助け出してしまいました。うっかりです。私は私の腕の中で気絶している男性の顔を見た。
「…っあ!先程の方!!……っ【お館様】!!!」
さっきの少年が私の方を見て目を見開きこちらに駆け出してきた。…だから、動くなって言っているではありませんか!もう!!
「【お館様】っ!…っよくぞご無事で!!」
……、まあいいですよ。それより、漸くこの男性の素性がわかりましたね。この人が【お館様】ですか…。私の所のお館様とは随分と雰囲気が違いますね…。
「…この方があなたの言う【お館様】なのですね。」
助けられてよかった。