第12章 似たもの同士
私達は…いいえ、私は店の方にお礼を言って店を出た。家康さんはあの後、ずっと無言でしたからね。店の方は笑っていましたけど。
「…次、どこ行きたいの?」
「………私の意見を尊重して下さるのですか?」
「…別に、あんたが次に来たときに迷子にならないように、ある程度道を覚えていて貰おうと思っただけ。」
…なんとなく掴めてきました。この人って、優しいのにすっごく言葉がトゲトゲしてるっていうか、私が何で彼といて変な気分になるのか少しだけ分かった気がします。
私とは真逆の在り方の人ですね。…私は笑顔を貼り付けながらも、内面では結構な毒を吐いていますが、この人はその逆で、かなりの毒を吐いていますが、本当は凄く思いやりのある方なのでしょうね。だから、あの夜も私を励ます為にああ言った訳ですか。随分と口下手ですけれどね…。
「ふふっ…いま考えてみると色々納得です。」
私が笑うと彼は怪訝そうな顔をした。
「何、急に笑いだして…変な奴。」
「ふふっ、ごめんなさい。随分と勘違いをしてしまって申し訳ないなって思って。」
「勘違い…?」
「ええ、本当に申し訳ないです。あなたが他人を思いやれるとても優しい人なのに私ったら…。」
「なっ…!」
家康さんは顔を真っ赤にして下を向いた。
「…馬鹿じゃないの?俺があんたにいつ優しくしたって?」
「ふふっ、今してくれているではないですか。さっきだって、私が気になっている簪を買ってくれましたし、今だって私が行きたい場所に道案内をしてくれています。」
「………勝手に言ってろ。」
私の言葉を聞くと、家康さんはそっぽを向いてしまった。耳が少し赤いのが見れます。……そっぽを向いている癖に、手は離さないんですね。…本当に、
「……(ボソっ)変な人。」
「…何か言った?」
「…いいえ、なんでもないですよ。」
秀吉さん、ありがとうございます。おかげで彼の事を良く知ることが出来ました。お礼をしなくてはいけませんね。あっ、信長様にもお礼を言わなくては。ふふっ、やる事が山積みですね。本当に、こんなにゆっくり店を見たりして、買い物して休めるなんて、あの頃は考えもしませんでしたよ。…少しだけ、ですけれどあの時よりも今の方がだいぶ楽です。…決して誰にもこんな事は言えませんけれど。…さて、次は何処に行きましょ
「きゃぁぁぁ!誰か、助けてえぇぇ!」
…何事でしょうか?