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戦乱の蝶姫

第12章  似たもの同士


いきなり連れてこられて、何なんですか、もう!私は、辺りをキョロキョロ見回している、家康さんを見た。
「あんたが気になるのってどれ?」
「そこの簪ですけれど…。」
そう言って私はその簪を指差した。黄色の黄蜀葵に蝶が止まっている簪だった。…何故これに惹かれたのかは分かりませんが。蝶が入っていたからでしょうか?
「…ふーん。ねえ、そこの人これ包んで。」
そう言って、彼は店の人らしき人にその簪を渡した。
「おや、家康様ではありませんか。来てくださってありがとうございます。……そちらの方は家康様の奥様ですか?」
店の方は私達二人が手を繋いでいるのを見て、微笑ましそうに笑った。
「…別に、ただの迷子防止。あと、早くこれ包んで。」
…もっとマシな言い方は無かったんですか?イライラしていると、店の方は家康さんにニッコリと笑って返した。
「ふふっ、分かりました。少々お待ちください。」
そう言って、店の方は簪を受取り、紙に包んでくれた。ていうか、お支払いは…。
「40文になります。」
「…はい。」
そう言って、彼は店の方にお金を渡した。
「ありがとうございます、では此方をどうぞ。」
そう言って、簪を私に渡してきた店の方。…えっ、私にですか?
「…あの、何で私に?」
不思議そうに見ると家康さんは少し照れくさそうな顔をした。
「…欲しかったんでしょ、要らないの?」
「…頂けるのでしたら有り難いですけれど…お金は…?」
「…俺が払ったからいい。」
「………ですが、」
困った様な笑みを浮かべていると店の方から話し掛けられた。
「家康様、駄目ですよ。女性にはもっと優しく接しないと。…特に家康様には言葉が圧倒的に足りません。ねぇ、奥様?」
「えっと…別に奥様じゃないんですけれども…。」
「おっと…これはこれは、大変失礼致しました。……では、お嬢さん、私が通訳致しますと、家康様はあなたにこの簪を贈りたいと言っているのですよ。」
その言葉を聞いて私は、彼を驚いて見る。
「…何、要らないの?」
…言ってくれなければ、分かりませんよ。全く、どこの冨岡さんですか、あなたは…。
「いいえ、有り難く頂きます。家康さん、ありがとうございます。」
「……たいしたことじゃないし。」
頬を赤く染めながら明後日の方向を向く彼を少しだけ可愛いと思いながら、私は受け取った簪を持ってきていた巾着に入れた。





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