第12章 似たもの同士
「では、楽しんで来てくださいませ、しのぶ様。」
「……楽しめるかどうかは分からないけれど行ってくるわね、陽。」
「…お気をつけて。」
そう言って、お辞儀をする陽のもとを離れて、城門へと向かう。一応何があるかわからないので、日輪刀は竹刀袋に入れて背中に背負った。それと、薬剤確認もしておいた。この2つは私の常備品だ。…それと、お金をもらった、秀吉さんから。
「…此れは、お金ですか?」
「ああ、そっちの時代とは違うのか?」
「…ええ、かなり。」
私は結構な量のお金を貰った。…これって小遣いですかね?
「そっか、ならありがたく使えよ。今日の、お小遣いってやつだ。」
…私の予想が当たってしまいました。
「へぇ…ありがとうございます、秀吉さん。」
「…楽しんでこいよ、家康と…仲直りしてこい。」
……だから、それは無理ですって。
「それは…できたらいいですねぇ…。」
「いいや、できたらじゃ駄目だ。ちゃんと仲直りしてこい。…いいな?」
「……はぁ、………分かりました。」
落ち込んで歩いていると、門の所にいる家康さんを見つけた。…待たせてしまったみたいですね。急ぎませんと。私は、少し早足で彼の下に駆け寄った。
「お待たせしました、家康さん。…待ちましたか?」
「うん、遅い。…もっと、早くしてよ。」
「……気遣いが出来ないんですか、あなたは。」
また、イライラしそうになったとき、家康さんが片方の手を出してきた。
「…………んっ。」
「…何ですか、この手は?」
「あんた、城下を歩くのは初めてでしょ?……迷子防止。」
…失礼な方ですね、本当に。まあ、いいでしょう。仕方なくですよ、もう…。私は、家康さんの手に自分の手を重ねて、握った。
「…じゃあ、行くよ。」
今気づきました……私の方を一切見ないで、歩いている筈なのに私の歩幅に合わせてくれている…のでしょうか?…全く何なんでしょうか、変な気分です。
ガヤガヤ…
随分と賑わっていますね、流石安土の城下です。私は、いろんな店を見ながら楽しくなっていた。すると、ある一軒の店にある髪飾りに目が止まった。私がジッと見ている事に家康さんも気づいたみたいだった。
「…あそこの店、気になるの?」
「…えっ、は、はい。まあ、」
「…じゃあ、行こう。」
「…えっ、ちょっと!」
彼はつないでいる手をグイッと引っ張り、その店に向かった。