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戦乱の蝶姫

第11章  蝶姫またの名を薬姫


チュンチュン…

「……もう、朝になってしまいましたか。」
私は、布団から出て昨日の夜のことを思い出した。


『……何で、辛そうな顔して笑ってんの。……意味わからない。』

「………分かってますよ、そんなこと。」
私の笑顔は、姉を真似た笑顔だ。だからこそ、一部の人にはそれが歪んだものだと見破られてしまう。でも、それがよりにもよって家康さんなんて…。昨夜の出来事のせいで全然寝付けませんでしたよ。……最悪です。

「…しのぶ様、起きられましたでしょうか?中に入っても宜しいですか?」
襖の奥から声が聞こえた。…この声は陽さんでしょうか?
「はい、陽さん。大丈夫ですよ。」
「はい、では失礼いたします。」
そう言って、襖が開けれたかと思うと女中の方は陽さん以外にも何人かいた。…あら、昨日の着物を勧めてくれた子達まで…。

「…此れは、一体?」
「しのぶ様、あなた様は織田家ゆかりの姫様であられるお方。ですので、我らがお世話をさせて頂くのは当然でございます。」
…そうでした。昨夜、家康さんが言ったように私は織田家ゆかりの姫となったのでしたね。




『信長様、診療所はいいとして、しのぶの素性は如何なさいますか?……幾ら何でも、このような事を全て話す訳にはいかないでしょう。』
診療所の場所が決まった後、光秀さんが信長様に向かって話した。
『ならば織田家ゆかりの姫として扱えば良い。そうすれば、家臣達も疑問は持たんだろう。……よって、先程の話は門外不出だ。猿、貴様も異論は無いな?』
信長様は得意そうな顔をしながら私の方を向いた後、チラッと秀吉さんの方を見た。
『……お館様がそうおっしゃるなら、どうして異論など申し上げられましょうか。俺は、信長様に従います。』
……今回は睨まれずに済みました。
『…皆も良いな?』
『『『『御意。』』』』

…姫様って言われてもいまいちピンとこないのですが。でも、女中の方々を困らせる訳にはいきませんね。
「分かりました、皆さん宜しくお願いしますね。」
ニッコリと彼女達に微笑みを向ける。
「かしこまりました、しのぶ様。」
陽さんは、少しは微笑んだかと思うと直ぐに無表情に戻ってしまいました。…気持ちが顔に出にくい方なのでしょうか?

「皆様、大広間にてお待ちです。しのぶ様、お着替えを済ませましょう。」

…何故、大広間なんですか、皆さんって?


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