第11章 蝶姫またの名を薬姫
突然、挙動不審になった秀吉さんを不思議に思い、見ていると政宗さんが秀吉さんの背後に現れ、彼の肩を自身の方に寄せてニヤニヤしながら話しだした。
「そんなの決まってんじゃねぇーか。女だよ、お、ん、な。どうせ、逢瀬の誘いに断りきれなくて、いろんな娘達と行ったんだろ?その場所がしのぶが指をさした場所ってわけだ。」
すると、図星なのか肩をビクッと揺らした秀吉さんは恨めしそうに政宗さんの方を向いた。そして少し彼を睨んだ後に、此方を向いて困った顔をした。
「…仕方がないだろう?彼女達がどうしてもと言うんだ、…断りきれなくてな。」
…彼女達って………。今まで、一体何人の女性と逢瀬をしてきたのでしょう、この男。私は汚いを物を見る目で彼を見た。…やっぱり、女タラシですね。…………あと、クソ野郎ですよ。
「…おい、そんな目で俺を見るな。頼むから。」
「……ご自身の行動を改めてみては如何でしょう?」
私の言葉を聞くと秀吉さんは膝を落として嘆き始めた。……面倒くさいですね。
「仕方なかったんだよ…。数人の子に囲まれて…。」
……なんか勝手に懺悔を始めましたよ。ていうか、数人って…。これ以上聞くと更に幻滅しそうなので、無視しましょうか。
「…大丈夫ですか、秀吉様?」
あら、あちらに三成君が行ってしまいました。仕方がありません、二人は一旦置いておきましょう。
「…さて、話の続きだな。……このあたりはどうだ?此処なら、人通りもかなり多いはずだ。それに、この場所なら、城からそう遠くはなかろう。」
信長様が意見を出して下さいました。…ふむ、住宅が密集している場所ですね。此処なら患者さんも来やすいですし、城からも見える位置なのでいいかもしれませんね!
「…その提案、頂きます。この場所にしましょう。」
そうして場所は決まり、それから着々と必要な器具、薬草などを信長様と何時までもいじけている秀吉さんとそれを宥めている三成君に確認してもらい、準備は進んでいった。
…もう夜ですねぇ。この世界の夜はこんなにも静かなのですね。私は寝付けなくて、夜中に起きて襖を開けた。…少し、散歩でもしましょうか。私は寝間着に、姉の羽織をはおって廊下に出て歩いた。
「…あら、あなたも寝つけないのですか…家康さん?」
私は視線の先にうっすらと見え続けていた家康さんに声を掛けた。
「…別に、ただ月を見てただけ。」