第3章 助けた少年
取り敢えず、怪我人の方が優先です。火傷に効く薬剤はっと…。後、鎮痛薬も飲ませておきましょうか。ずっと痛そうですし、見たところ大きな外傷はないようで、良かったです。ある程度の処置をしていると、目を覚まし始めたひと。少年とでも呼びましょうか。少年はガバっと起き上がると辺りをキョロキョロし始めようやく私の方に向いた。すると、私の顔を見るなり、いきなり頭を下げた。…っえ?なんですか?急に…。
「名も知らないお方!助けていただきありがとうございます!この恩決して忘れません!!」
…随分力強く、ハキハキとした少年ですね。一瞬、炭次郎君の影が見えましたよ。ええ、見えましたとも。
「…んん、…礼には及びません。人として当然のことをしたまでです。」
少し、焦りましたが、それで崩れる私ではありませんよ。さて、気を取り直して。
「いいえ!何かお礼をさせて下さい!」
………。
「いえ、大丈夫です。」
「ダメです!それだと俺が困ります!長男なので!」
……頑固ですね。炭次郎君の親戚の方でしょうか?ていうか、それ長男関係あります?
「…では助けた礼として、質問よろしいですか?」
諦めて詰め寄ってくる彼を制して、落ち着かせる。
「いいですよ!お礼ですので、何でも聞いてください!」
はぁ…。やっと、本題に進めますね。
「あなたはなぜ今も燃えている寺の中から出てきたのですか?あなたの他にも誰かいるのですか?」
すると、その少年はみるみる顔を真っ青にし、そうだった!っと脱兎のように起き上がり、駆出そうとする。って、ちょっと?!
「あなた、自分自身の今の状態分かってるんですか?!全身火傷を負って、重症ではないですけれど、それに近い状態なんですよ!!」
私は、走りだそうとする彼の服を引っ張る。…何この馬鹿力!私、常中使ってるんですよ?!
「…っ離してください!行かないと、お館様が!!」
「お館様…?」
「はいっ…急いで助けに向かわないと…まだ寺にっ!!」
どうやら、彼の主である【お館様】が燃え盛る寺の最上階にいるらしい。…はぁ。また、面倒ごとですか。仕方がありません、この少年を助けた訳ですし…。
「少年」
「っはい…?」
その少年は私の顔を見て少し顔が強張ったように見えた。
「そのお館様のいるところを教えて下さい。今すぐに!」
助けてやりますよ、その【お館様】って人を!