第11章 蝶姫またの名を薬姫
私は普段持ち歩いている、薬剤の調合器具を出した。
「…これって、薬草だよね?あと、この針みたいなやつは何?」
…家康さん、薬草について詳しいのでしょうか?
「はい、今ご覧になられているのはシナマオウと言って、鎮咳、去痰、抗炎症、発汗、解熱などの効果を持った薬草です。薬効は茎の部分で、熱冷ましの薬草ですね。この薬草は西暦1885年に発見されたので、恐らく皆さんは知らないと思います。私の時代でも最近になって発見されたんですよ?そして此方は、南蛮の方から伝わってきた物で注射器と言います。調合した薬剤はここに入れて注射といって、腕に打つんです。…別に打つところは腕じゃなくても大丈夫です。…痛みは保証しませんけど。」
そう言うと、何人かが青ざめた顔をした。そうなんです、実際針に似ていますけれどこの注射器、結構、針が太くて皆さん意識があると嫌がるんですよね…。…寝てるときは強制的にですけれどね。
「…ふーん、未来にはこんな薬草があるんだ。この、しなまおうってどこで取れるの?…出来れば教えて欲しい。その…ちゅうしゃ…?っていう器具も見たことないし。」
家康さんがキラキラとした目でこちらを見てくる。…そんな顔を向けられたの初めてなのですが…。どう反応すればいいのでしょう…?
「…えっと…?」
困惑した声を漏らすと、前の方から笑い声が聞こえた。
「…クックックっ。家康、貴様しのぶが嫌いだったのではないのか?さっきから、素っ気ない態度だったではないか。」
信長様が家康さんを茶化すように笑った。すると、家康さんは我に返ったように、ゴホンっと咳払いをして、顔を少し赤らめて信長様の方に顔を向けた。
「別に、信用した訳ではないです。…ただ、見たことない、薬草と器具があったから…。」
少し視線を反らして話しているのを見ると、大分意地っ張りなのがわかりますね。
「…なるほど、家康が証人という訳か。…良かろう、しのぶ。貴様を信用してやる。」
……何とか、信用して頂けたみたいで本当に良かったです。私は一安心して、チラリと左を見た。すると、何やら考え込んでいる秀吉さんがいた。不思議に思っていると、その言葉は………突然だった。
「………しのぶ、此れは提案なんだが、…家康と一緒に薬学について学んだらどうだ?」
「「……はぁっ/はいっ!?」」
秀吉さんの提案に目を丸くした家康さんと私だった。