第10章 安土の蝶姫
「フッ…随分と肝の据わった女のようだな。改めて、よろしく頼む。…後、先程のことは詫びよう。済まなかった。」
…何故か、腑に落ちませんね。先程とは打って変わって、不敵な笑みを浮かべていますし。……この人の本心が読めない。取り敢えず、合わせておきますか。
「はい、勿論です。そのあたりは、仕事の関係上慣れっこなので大丈夫ですよ。」
こちらも、彼に微笑みを向ける。…真意が分からない相手ほど怖いものはありません。……暫く、この男の様子を見ますか。
「さて、話がだいぶ逸れてしまいましたね。何処まで、話しましたっけ?」
「…あんたが鬼殺隊の強い剣士の一人だってとこまででしょ。ほんの少し前のことなのにもう忘れたの?」
…嫌味の天才ですねこの人。多分、私と同系統の方なのでしょうね。言葉選びが絶妙で痛いところを突いてきます。
「…はい、すみません。うっかりです。」
「…そういうの、どうでもいいから早くして。」
「……………(ニコっ)。」
…やはり、同じ部類の人間は同じ部類の人間を嫌うというのは本当のことだったのですね。所謂、同族嫌悪というやつですね。…なんで私、こんなに長ったらしく説明しているのでしょうか?……何故でしょう、イライラが止まりません。気分を変えたくて、チラッと周りの方を見てみると、早く話をしてほしそうな目をしてますね。特に、信長様が…。
「分かりました、続きですね。…私は確かにその9人の中にいましたが、他の8人と比べると恐らく最弱なのだと思います。……なにせ、鬼の首が切れない剣士は隊内で私だけでしたから。」
「…それは、どう言う意味だ?何故、首が切れないということが弱さに連なるんだ?」
秀吉さんの的確な質問に私は困り笑顔を浮かべ、話しだした。
「…先程も言いましたように鬼は、普通の攻撃は効きません。なぜなら、回復してしまうからです。ですが、例外は有ります。それは、鬼の首を切ること、日光に当てることです。」
「なるほどな、それで柱の中で最弱という訳か。…しかし、それではどうやって鬼を倒すのだ?鬼は、首を切るか、日光に当てない限り死なないのだろう?」
信長様もいい質問をしてくれますね。私は笑顔で信長様の質問に答えた。
「それは、見つけたからです。首を切るでも、日光に当てるでもない、第三の方法を…。それは、…………毒です。」
蝶はゆっくりと、微笑みながら語った。