第10章 安土の蝶姫
「鬼は人間と違い、夜にしか行動ができません。ですが、その分どんなに攻撃を受けようが、体の一部が大破しようが、体が少しでも残っているのならたちまち元の姿に戻る。また、主食は人間であり、人間は睡眠で回復しますが、鬼の場合は人間を食べて回復します。ですから、鬼に睡眠はいりません。……普通に戦えば、人間に勝ち目はありません。」
「なるほど、貴様の世界には人智を超えた化け物が存在し、それらと戦う事が出来るのがその【鬼殺隊】という訳か。」
信長様の理解力の高さには本当に助かります。私は、肯定するように頷いた。
「そうです。そのために、鬼殺隊が結成され、鬼と鬼殺隊の戦いは平安の時代から、1000年以上続いていました。また、組織には階級というものがあり、強さを分けていました。その中でも、9人しか居ない鬼殺隊の最強の剣士たち。彼らは【柱】と呼ばれ鬼殺隊の支えとなっていました。」
そこまで、話し終えて一息つく。皆さんを、見てみると、随分と考え込んでいるみたいだった。すると、ある人物から声があがる。
「…お前は先程の自己紹介の時に鬼殺隊、蟲柱と言っていたな。…お前もその最強の剣士の一人だったという訳か。」
驚いたことに、それは先程私を睨んでいた白髪の人だった。
「はい…えっと…、」
「クック…自己紹介をしていなかったな。俺の名は明智光秀。此方におわす、織田信長様の家臣だ。」
……明智…光秀!?……この人があの…。……でも、この世界は史実と違うみたいですし、本能寺の変に関わりがあるかどうかは…。そうなれば、今回の件は一体誰が…?……っ、もしかして、寺に向かう途中に見た、あの僧侶の方…。一人で悶々と悩んでいると横から声がした。
「どうなされました、しのぶ様?ご気分が優れないのなら…。」
とてもお優しいですね、三成君。……少し、落ち着きました。取り敢えず、この件は後ですね。
「いいえ、大丈夫です。何でもありませんよ。ご心配をお掛けしましたね。」
彼に微笑むとニッコリ笑顔が返ってきた。
「そうですか、それなら何よりです。何かありましたら、何でもお申し付けください。」
…いい人過ぎてこちらがタジタジになってしまいそうです。
「…はい、ありがとうございます。光秀さんも、これからよろしくお願いしますね。」
ずっと睨まれていましたが、自己紹介したなら話は別です。私は、ニコニコしながら頭を下げた。