第10章 安土の蝶姫
皆さんを見回したところでゆっくりと話し始めた。
「まず、最初にお伝えしておきます。……私はこの時代の人間ではありません。」
「…はっ?」「えっ、?」「…なっ!」
色々な反応が見られますね。肝心の信長様は…?
「……ほぅ。それで…?」
…興味津々みたいで何よりです。それでは続きを話しましょうか。
「ここは確か今は天正10年ですよね?信長様。」
ちらりと彼の方を見る。
「ああ、それがどうした?その話とどう関係がある?」
不思議そうに、私の方を向いて答える、信長様。他の皆さんも似たようなものですね。
「私がいた時代は大正4年…。つまり、私は理論上不可能とされる、時空移動とやらをした訳です。わかりやすく言うと、今の時代は南蛮の西暦でいうと1582年、そして、私の居た時代は1915年。つまり、およそ400年前に来てしまったと言う訳です。」
私の話を聞いて皆さんポカーンとしてます。特に信長様なんか、怪訝な顔をしています。
「…貴様、正気か?こんな話を聞かされたところで、貴様を信じるとでも?」
「…ええ、だから最初言ったではありませんか。…話が終わるまで口を出すな、抜刀するなと。」
信長様と私の視線が重なり合う。時間が経つのがとても遅く感じます。
「…分かった、話を続けよ。」
「お館様っ…!信じるのですか?!荒唐無稽なこの話を!!」
秀吉さんの怒声が室内に響いた。…この反応も想定内です。だから先に条件を出したんですよ。
「…秀吉さん。私の条件に【話が終わるまで、口を出さないこと】と言いましたが、早速破るのですか?」
「………ぐぅっ。」
「秀吉、一旦黙って聞いてみようぜ?激昂するのはそれからでも遅くない。」
「……っ後で色々、全部聞かせて貰うからな!」
そう言って、席についた秀吉さん。それから、
「助言ありがとうございます、政宗さん。」
助けてくれた、彼に向って頭を下げる。
「いいってことよ。…それよりも、早く話を続けてくれ。俺も気になってんだ、その話の続きを。」
口元を上げて笑う彼を微笑みながら見つめる。
「分かりました、話を続けます。……私は、実は死んだんです。…ある鬼に、食われて。……私が何者なのか、それはこの食われた鬼と深く関係している、鬼殺隊であるとしか言えません。…鬼殺隊、その名の通り鬼を殺す組織です。…私が居た世界は鬼という、人とは全く違う生物がいました。」