第10章 安土の蝶姫
「鬼殺…隊?…聞いた事もないな。信長様、本当にこの娘が信長様を炎の中から、助け出したのですか?」
更に鋭い目つきでこちらを見てきた、白髪の男性。…私、ここに来てからずっと睨まれ続けてません?例えば、秀吉さんとか…秀吉さんとか!
「あぁ、しのぶは燃える寺の中で、この俺を起こしたかと思いきや、首筋に手刀をして運びよったわ。……クックックっ……実に、面白い女だ。」
…やっぱり、あの時のこと根に持ってますよね、信長様。…仕方がないではないですか、あのまま、あの場で説明していたら、皆炭になって今この場所にいないですよ。助け出したのですから、咎められるのは筋違いなのでは…?……後、秀吉さんが今にも殴りかかってきそうな雰囲気を出しているのですが、止めなくてもいいのですか?…あっ、三成君が宥めてくれています。…家康さんもそのまま、秀吉さんの裾を抑えていてくださいね。
「仕方がないではありませんか、信長様。あの時は緊急でしたので、ああするしか他に方法が無かったんですよ。……まぁ、ちょっと面倒くさいと思ったのは事実ですが…。」
朗らかになるべく刺激しないしないように微笑んだ。特定の一人を…。でも、もう無理だったみたいですね…。
「っ…やっぱり、他意があるんじゃないか!」
いよいよまずいと思い始めたとき、前方から鶴の一声がした。
「…猿、一旦黙れ。貴様のお陰で話が進まないではないか。俺はこの件については何も咎めない。…下がれ。」
「…っは!出過ぎた真似を致しました。」
…また、睨まれてしまいましたよ。目が完全に後で問い詰めてやるっていう目です。…後が大変ですね。
「さて、しのぶ。貴様に聞きたいことがある。」
「……はい。」
やっと本題ですね。まあ、聞かれることは分かっていますが。
「しのぶ、貴様は…一体何者だ?そして、何処から来た?」
この質問に、部屋の中の空気が冷えたような気がする。ピリッとした空気の中、私は口を開いた。
「……話をするにあたって、条件を言ってもいいですか?」
「……お前っ!!」
「…ああ、構わん。申せ。」
秀吉さんの怒声に、信長様の冷静な声が重なった。
「ありがとうございます。私の出す条件とはこの話を最後まで聞くまで、口を出さず、抜刀しないこと、此れだけです。」
「…分かった。条件をのんでやる。皆も良いな?」
一部は不満そうにしながらも頷いてくれた。