第10章 安土の蝶姫
「しのぶ、更に美しい姿になったではないか。早く、此方に座れ。」
そう言って、信長様は自身の前に座らせようとする。…こうして見ると圧巻ですね。有名な戦国武将がズラリと並ぶなんて、そうお目にかかれませんよ。…ここ、本当に戦国時代ですよね?何人か、時代が違うと思われる方がいらっしゃるのですが。例えば、政宗さんとか。しかも、皆さん、隠してるみたいですけれど、殺気がだだ漏れです。特に、信長様の左に座っている白髪の人。…会った事は有りませんが、何か重要な役職なのでしょうね。主の近くに座っている訳ですし。取り敢えず、私は信長様の命令を聞いて、皆さんの前に座った。
「さて、しのぶ、昨夜の続きだ。漸くゆっくりと話せるな。」
「ええ、本当に。処で、信長様。早く、本題を言ってくれませんか?周りの武将の方々の視線が痛いので。」
そう言って、私は、さっきからずっと私をジッと見続けている、白髪の人に視線を向ける。
「…おや、此れは済まない。……姫様。お気に触ってしまったかな?」
感情が読み取りにくい、声色と笑顔が私の方に向いた。……この中で、一番殺気が強いのはあなたなんですが?
「…いいえ?…ただ、お会いしたこともない、方にいきなり殺気を浴びせ続けられるものですから、どうすればよいのか考えていまして…。」
私はニコリと微笑みながら、彼を見つめる。一瞬の沈黙がこの部屋に駆け巡った。
「…なるほど、ただ者ではないという事ですね、信長様。殺気を向けられて怯まない女など普通、いるはずがない。…お前は一体何者だ?」
…それを聞きたいのは私の方ですが?私はまた、ニコリと笑う。険悪な雰囲気がこの部屋を更に満たしていった。
「…いい加減にしてくれる、二人共?此処で、喧嘩を始めないで。……軍議の邪魔するなら、出てってくれません?」
前方の左に座っていた、家康さんが会話に割り込んできた。
「そうだぜ、光秀、しのぶ。お前ら、初対面で不穏な雰囲気を出すなよ。じゃないと、ここに居る俺らが、すっげぇーやり辛い。」
政宗さんが私達の空気をなごまそうと横から茶々を入れた。……他の皆さんも似たような感じですね。仕方がありません、此処は大人しくしておきましょう。
「他の皆様には改めてご挨拶申し上げます。鬼殺隊、蟲柱、胡蝶しのぶと申します。」
私は、手を三角の形にして座り、深く頭を下げた。