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戦乱の蝶姫

第10章  安土の蝶姫


「…まぁ!なんて美しいのかしら!しのぶ様、とてもお綺麗ですよ。此れなら、信長様も惚れ直してしまうのではないでしょうか?」
女中さんたちがキャーキャー騒いている中で一つ訂正があります…。別に私、信長様と恋仲ではないんですけどねぇ…?そもそも、出会ってまだ、一日も経ってないんですよ?惚れる以前の問題だと思いますが?勘違いが加速する中、私は、大きな鏡に映った自分を見てみる。着飾った自分を見るなんて何年振りだろうか。いつも、死と隣合わせのあの場所では休みなど無いに等しかった。…そういえば、以前、潜入任務で冨岡さんと夫婦の役をしたんでしたっけ…?すっかり忘れてました。…皆、無事でしょうか?……考え事をしていると、やはり鬼殺隊の仲間の事を思い出す。カナヲは、私と姉の仇を取ってくれたかしら?やっぱり、強くて誰かに助けて貰ったとか?
……多分、それは伊之助君なのでしょうねぇ。あの時、【お願い】しましたから。




丁度、最終決戦の一週間前だった。
「……伊之助君、ちょっといいですか?」
「…?おう!なんだ、戦う気になったか、しのぶ?!」
「…無闇やたらに、戦えばいいというものではありませんよ。今、君に必要なのは休息です。しっかり休んで、次の戦いに備えてください。」
「…分かった。俺は親分だからな!子分の意見はそんちょー?…してやる!」
「はいはい、お願いしますね。…伊之助君、もう一つ、お願いを聞いてくれますか?」
「イイぜ!子分の願いを叶えてやるのも、親分だからな!」
「ありがとうございます。
……どうかカナヲの側に居てあげてください。……私がいなくなっても。」

「………しのぶはいねぇーのか?」

不思議そうに、そして寂しそうに私を見
てくる少年。そんな少年に私は無情にも言葉を紡ぐ。







「…はい、戦いが終わる頃にはもう私はいないでしょう。……………ごめんなさい。」






…あの時、私はちゃんと笑えていただろうか?
…いずれ、私達の下から巣立って行くカナヲを見届けるつもりだった。姉さん、あなたが死ぬまでは…。……感傷に浸ってしまいました。やっぱり、ダメですね、私は…。

『立ちなさい。蟲柱、胡蝶しのぶ。』

…姉の声が、確かに聞こえたんだ。
あの時の、選択はきっと間違っていない。
多分…時間を巻き戻しても、私は同じ道を選ぶ。






だから…前を向け。


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