第9章 安土という場所
「…信長様。本当にこんな弱そうな奴が信長様を助けたんですか?背も小さいし、力もたいして無さそうですけれど。」
…今、私の地雷を踏まれました。…分かってますよ、見た目が弱そうだとか、小さいし、力もありませんけど…。だからって、あなたに言われたくないんですけれど!…最悪です。私が、一番嫌いな部類の人ですよこの人。私は、笑みが崩れそうになるのを堪えて、文句を言ってやりそうなのを我慢した。過去、最高に怒ってますけれど?あのドジっ子冨岡さんよりも此方の方が、イラッとしますね。…血管が浮き上がってないか、心配です。私が、黒い笑みを浮かべていると、しびれを切らした様に、このムカつく男は話し始めた。
「…徳川家康。別に、あんたと仲良くする気なんて、全くないから。」
「…こっちだって、お断りですよ。あなたみたいな、初対面の人にいきなり暴言を吐く男の人なんか。」
「……は?」
「…あっ、今のは聞かなかったことにしてください。同じ城にいるのですから、よろしくお願いしますね。家康さん。」
「………なんで、下の名前なの?」
「…皆さん何故か下の名前で呼べと言うのでつい…。あっ、名字の方がよろしかったですか?」
「……別に、変えなくていい。どうせ、これ以降会わないだろうし。」
「………(ニコっ)。」
……最悪以外の何者でもありませんね、この男。イライラしすぎて、笑顔のまま血管が浮き上がってきた時、丁度、声がした。
「家康様、そんなにツンツンしていては、いろんな方々と仲良くなれませんよ。もっと、女性には柔らかに接してみてはどうでしょう?」
「…五月蝿い、三成。お前には関係ないだろ。」
今まで、会話に参加していなかった、銀髪の男の人、確か…。
「石田三成と申します、しのぶ様。私は秀吉様の家臣であり、織田軍の参謀を仰せつかっております。どうぞよろしくお願いいたします。」
ぺこりっと音のする様な礼儀のいいこの人は随分と感じが良さそうです。
「よろしくお願いしますね。それと、別に、しのぶ様と呼ばなくても…。」
「いいえ、そうはまいりません。しのぶ様は信長様の寵姫となられるお方です。…あと、私のことは三成とお呼びください。」
…また、来ましたよ。名前呼び!
「…私は人を呼び捨てにすることが、苦手でして、三成君とお呼びしてもいいですか?」
私は、彼に向かって満面の笑みを浮かべた。