第9章 安土という場所
「随分と、おモテになるんですね…。…………、(ボソッ)女の敵ですね…。」
秀吉さんから目を反らし、ボソッと呟いた。
「そりゃあ、女性の好意は無下にできないしな。……?後、最後に何か言ったか、しのぶ?」
「…いいえ、何も。」
聞こえていたら、また一悶着起きそうですし、聞こえてなくて幸いでした。…さっきから、笑いを必死に堪えているのバレバレですよ、政宗さん!
「…っひぃ、くるしい…、クック…!」
「…皆様、盛り上がっているところを申し訳ありませんが、着きましたよ。我らの居城、安土城に。」
炭明君が、前方を指差すと大きな城壁とその上にそびえ立つ、大きな城、安土城。…へぇ、実物はかなり大きいのですね。前方の頭上に見える城をぼんやり眺めていると、城に続く橋の所に二人の人影が見えた。
「…随分と長い旅路だったんですね、信長様。此度の本能寺放火に関する人物を調べて置きました。……それと、ご無事で何よりです。」
「信長様…。申し訳ありません。わたくしが共に本能寺へと向かえば、信長様がこの様な目に遭わずに済みましたのに…。」
黄色を主体とした色の武装をした、色素の薄い髪をした方と、紫色を主体とした色の武装をした、銀髪でしょうか…?そのような容姿のお二人が、此方に駆け寄って来ました。
「家康、ご苦労だった。後に軍議にてその詳細を申せ。それから、三成。此度の件は貴様の責任では無い、そう思い詰めるな。……それに、いい拾い物もしたしな。」
「…分かりました。…所でその娘は何処で拾ってきたんですか?」
ちらりと、私と家康…?…さんの目が合う。…っあ!すぐに逸らされました!
「二度言わせるな、言ったであろう?いい拾い物をしたと。」
信長様が私の手を取り、顔を近づけてくる。…またですか!
「懲りない人ですね、あなたは…。」
パシンっ!
彼の手を振り払うと信長様はまたニヤリと笑って、家康さん?…の方を向く。
「此度の一件は、この女がいなければ俺は、とっくに死んでいた。この女は俺に幸福をもたらすに違いない。…しのぶ、俺の家臣に挨拶をせよ。」
…拒否権はなさそうですね。いいですよ、わかりましたよ!どっちみち、家臣ってことは嫌でも顔を合わせないといけないですし…。
「…胡蝶しのぶと申します。これからよろしくお願いします。」
すると、家康さん?…はふ〜んっと言いながら私を見定めるように見てきた。