第9章 安土という場所
ガヤガヤ…
「へい、らっしゃい!」
「奥さん、今日はいいのが入ったよ!是非、見ていってくれ!」
……っ!どうやら眠ってしまったみたいですね。もう、朝になっています。森は抜けたみたいですが、此処は何処でしょうか?町…?
「フッ…、やっと起きたなしのぶ。随分とぐっすり寝ていたようだが。…クックックっ」
そういえば、馬で移動してました…。何か色々あったので疲れてしまったみたいです。情けないですね、鬼殺隊の柱とあろう者がいつからこんなに軟弱になってしまったのでしょうか…。不甲斐ないです…。
「ふふっ、どうやら、眠ってしまったみたいで、お恥ずかしいです。…ところで、此処は何処でしょうか?随分と賑やかな町ですね…?」
私は辺りをキョロキョロと見回した。人が行き交い、元気な声がそこら中から聞こえる。最初に聞こえた声は、恐らくこの時代の魚屋でしょう。
「フッ、此処が安土の城下だ。貴様は此処で暮らしていくことになる。」
…なるほど、随分と賑わっていると思っていたら、やはり此処が安土…。いい場所なのでしょう。商人の方々の活気の溢れた声、子供の笑顔もちらほら見えますし。
「…そういえば、次の戦はどうなるんだろうね?例の朝倉の所とだろう?」
「うちの領主は信長様だよ?心配はいらないさ。きっと戦に勝利してくれるよ。」
何やら、不穏な話が聞こえました…。なるほど、どうやら戦が近いみたいですね。この時代は凄いですね…、奥様同士の会話の中にしれっと戦が入ってくるなんて。…私の時代では日本は一つの国として成り立っていますから、国内での争いは多分ないと思いますし、外国はどうか分かりませんが。
「あっ…!いらしたわ!秀吉様よ!」
「秀吉様!次はいつお会いになってくれるの?」
「家の茶屋に寄っていって!秀吉様ならいつでも大歓迎よ!」
突然、女性の方々が集まってきました。秀吉さんの所に…。…タラシなのでしょうか?
「あぁ…すまん!今は信長様の護衛を安土城までしなければならないんだ。…また今度な?」
「「「キャァァァァ…!」」」
…なんですか、この男は、やっぱりタラシと認識するべきでしょう。後、怒りっぽい人ってことで。
「…秀吉、相変わらず安土一のモテ男だな。でも、逢い引きも程々にしろよ?しのぶが、呆れた目をしているからな。なぁ、しのぶ?」
…こっちに振らないでください、政宗さん。