第25章 　血に抗え

場所は戻って、岐阜城、城門前。其処には冬を止めるために力を出し尽くした私を守るように、安土城の大魔王が堂々と立っていた。

「ふっ…軍神よ、貴様の技量はそこまでか？」

信長様がニヤリと口角を上げて、謙信様を挑発するように見た。その視線を受けた謙信様は、信長様に氷の様な瞳を向ける。

「…黙れ信長、少し準備運動とやらをしていただけだ。そうであろう、佐助？」

そういった後に謙信様は佐助君の方を見た、すると佐助君は感心したように謙信様を見て呟いた。

「…流石は謙信様。俺が教えた言葉をもう使いこなされるなんて、…教えたかいがありますね。………はい、準備運動は終わりです。…行くよ、軒猿。」

「「「「はっ。」」」」

シュタッ…！

次の瞬間に佐助君と同じような格好をした数十人の忍が集まり、一斉に散開した。私が驚いて見ていると、佐助君がニコリと笑う。

「…今回は信長様が来るまでの防衛だってことはちゃんと聞いていたから、軒猿の皆には別の場所で動いていてもらってたんだ。特に、岐阜城の人達を護衛をね。」

「…そうだったんですか、助かります。」

私がが微笑むと佐助君は困った様に、笑いながらも私に返してくれた。

「そう言ってもらえるとやりがいがあるよ。…ただ、一つ理想としては謙信様にお礼を言ってあげて欲しいかな。…さっきから、上司に睨まれていて怖いんだ。」

佐助君の言葉通り、私が彼と会話している所を謙信様と何故か信長様が睨むようにして見ている。家康さんなんか不機嫌顔を通り越してなんの感情なのか分からない顔だ。…私、何かしました？

「しのぶ、春日山城に滞在をする時はまず真っ直ぐに俺の下に来い。」

そう謙信様が言うと信長様が苛ついた様に呟いた。

「ほぅ…俺の前でそれを言うか。どうやら今すぐに死にたいらしいな？」

「…信長様、今回は手伝います。」

「一人も二人も関係ない。…掛かって来るがいい。」

三人の一触即発な雰囲気に冷や汗を流しながらも、織田軍の兵が更に加わり、信長様も来たことで反撃することがようやくできると思うと少しだけ安心した。

「どうどう、皆さん落ち着いて下さい。戦況は優勢ですがいつ敵に寝首を欠かれるか分かりません。信長様、如何致しますか？」

佐助君がそう言うと謙信様が不機嫌な顔をする。

「佐助…お前の主は俺だぞ。よもや忘れたわけではあるまいな？」