第25章 血に抗え
「勿論それは分かっています。ですが今の状況から、信長様に指示を仰ぐ事が最善であると考えました。なので謙信様、刀を構えようとしないで下さい。」
佐助君はそう言って刀に手に手を当てている謙信様を困った様に見つめた。
「ふんっ…さっさとそう言え。…但しもし、俺の下を離れるのならば…斬るっ!!」
謙信様は頭では理解しながらも、佐助君の方を見て少しだけ心配になったのだろうと思った。それを見た佐助君は目元を細くして応えた。
「安心して下さい、今の所、乗り換えるつもりはありません。」
「…今の所って…。」
家康さんが、呆れたように彼を見ながらも、謙信様がその答えに満足したようだったのでこれ以上下手な事を言って乱闘騒ぎにならないようにと私は考えた。
「ふっ…話は纏まったか?…これから、織田軍は敵の本拠地へ向かい、頭を叩く。そして、その後には此等の全ての元凶を作り出した男を潰しに行く。」
その言葉を聞いて、私はボソリと呟いた。
「冬の話に出て来た秋雨という男ですか。…いる場所の目星はついているんですか?」
「…ああ、この場所からそう遠くない村外れの古民家に居るとの情報が入った。光秀からの情報だ、おそらく間違いは無いだろう。」
「…なるほど、そいつを叩くならまずは前線にいる政宗さんを援護しないといけませんね。」
家康さんが話に入って来た。
「…そういえば、政宗さんは?置いてきたんですか?」
私がそう言うと、家康さんは少しだけ顔を反らしながら呟いた。
「…そのっ…あんたが…敵に攻め込まれているって政宗さんが教えてくれて、その後に勝手に此方に来ちゃったから…。」
「あら…それって、大丈夫なんですか?前線は政宗さん、今、お一人では?」
「それは心配要らん。…もう直ぐ、光秀がそちらに着く。……それと此方にも、もう二人が来たようだ。」
信長が向いた方向に顔を向けると、其処には赤甲羅の様な甲冑を着た人達が此方に向かってくるのが見えた。その先頭には久しぶりに見た顔ぶれが並んでいた。
「…よう、久しぶりだな、しのぶ。」
「久しぶりに女性に会ったのにその挨拶の仕方は無いんじゃないか、幸?…久しぶりだね、天女。待たせてしまったかな?」
「…幸村さん…信玄様っ!!」
数日ぶりにあった彼等は激しい戦いの跡が残った姿をしていて、改めて戦国武将であると感じた。