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戦乱の蝶姫

第25章  血に抗え


その場が静まり返った。謙信様は家康さんの言葉を聞いて、眉間に皺を寄せる。

「だとしたら、あれを止めることは厳しいな。…ある戦にて鋼牙の戦いを見た事がある。…あれは、本能のままに無差別に人を殺しておった、正真正銘の化け物だぞ。…それでも、助けるか?」

謙信様が私と家康さんを交互に見つめた。私は冬を止めたかったが、被害を考えて悩んでいると頭上から声がした。

「…何悩んでるの?…あんたが冬の管理を任されたんだ。あんたが、迷ってたら俺達が力を貸せない。」

家康さんは私の目をしっかりと見て、答えた。その言葉はある答えを導き出してた。

「…ふふっ…冬の事、疑っていたのでは?」

「確かに最初はそうだった。…でも、冬は変わったよ、あの夜に。…だからこそ、連れ戻さなくちゃいけない。」

家康さんの真っ直ぐな瞳に背中を押されたように感じた。

「…そうですか、…わかりました。皆さん、冬を助けて下さい…。」

私は家康さんと謙信様を交互に見た。それを受け取るかのように謙信様が頷いた。

「…勿論だ。お前の頼みは何でも聞こう。」

謙信様がそう言って、私の頭を撫でようとするとその手が払われた。

パシンッ…

「…徳川家康。貴様っ…。」

「…あんまり気安く、こいつに触らないで。それと、せめて徳川って呼べ。名字と名前で呼ぶな。」

「…貴様に言われる筋合いは無い。しのぶを此方に寄越せ。」

「嫌だね。」

「…なんだと…?」

…なんか、雲行きが怪しくなってきたような感じがする。家康さんと謙信様が睨み合っていてこのままではまずいと思ったとき、救世主が現れた。

「…謙信様、どうどう。話の軸がすり替わってます。今は、冬さんを止めないと。」

さっきから私達の会話を傍観していた佐助君が止めに入ってくれた。それを聞いて、二人は一旦落ち着く。…本当に冬を何とかしないとこのままではまずい。私が深く考え込んでいるとまたもや佐助君から話が切り出された。

「…しのぶさん、俺に一つ提案があるんだけれど…。」

ガバっ…!

「…っ本当ですかっ?!…っ!!」

「…しのぶっ!無理しないで…!」

咄嗟に起き上がった事により傷口が傷んだ。…それよりもっ…!

「…私は平気です…。…っそれより、教えて下さいっ…!その提案をっ…。」

「…かなり賭けの要素が強すぎるけれど、乗る?」
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