第24章 鋼牙の本能
「へぇ…いつの間にか親方様が停戦協定を受諾ねぇ…。」
「ええ、私もびっくりしましたよ。…でも、有り難いです。」
少しだけ不満そうな顔をする家康さんを佐助君と宥めながらも、私達は謙信様と冬が戦っていると思われる場所へ向かった。
ガキィィィィン…!!チャリっ…ズシャァァァァ!!
その場所に行ってみると戦況は優位だが突破口が見当たらないように感じた。私は家康さんの方を見つめると、彼も私をみていたようだった。
「…お願い、しのぶ。」
「ふふっ…わかりましたよ。」
その言葉を聞いて、私は敵の軍に穴を開ける為に跳躍する。
その瞬間に羽織がはためき、一匹の蝶がこの戦場に舞い降りたようだったとある忍が言った。
トッ…チャキッ…!!
「蟲の呼吸 蜂牙ノ舞 真靡き」
私はまず連携を崩すために、敵の大将の首を取る。私が放った鋭い突き技にその男は吹っ飛ばされる。
「がぁぁぁ…!!ぐぁっ…息が、っ…!!」
バタンっ…!
突然、敵の大将が倒れた事により辺りは騒然とする。敵の兵が皆さんポカーンとしていた。だが、私の後ろを取り、刀を向けて来る者が複数人いた。彼らが一斉に刀を振りあげようとしたとき、聞き慣れた鎖の音がした。
ゴゥゥゥゥゥ…!!グシャァ…チャリっ…!!
瞬間に私の周りの敵の兵は居なくなった。全員頭を狙われている。勿論こんなことをしでかすのは私が知っている中で一人だ。
「お姉様っ…!ご無事ですか!!」
一瞬にして敵をなぎ払った少女、冬が私の下に駆け寄ってきた。途中襲ってくる兵士をなぎ倒しながら。私が流石だと思って見ていると、近くに謙信様がいるのも見えた。私は少しだけホッとして、微笑む。
「ええ、大丈夫よ、冬。ありがとう、ここまで戦況を良いものにしてくれて。ふふっ…約束を守ってくれたのね。」
私がそう言うと、彼女は途端に笑顔になった。
「はいっ…!冬は言いつけどおり、上杉軍を攻撃しませんでした!もっと褒めてもらってもいいんですよ…?」
「ふふっ…良くやったわ。…謙信様、ありがとうございます、助けて頂いて!」
私が彼女の頭を撫でながら、謙信様の方に向かって叫ぶと彼は少しだけ微笑んだような気がした。そんな時だった冬に向かって刀を振り下ろされた瞬間を見たのは。私は咄嗟に冬を押した。彼女は何が起こったかわからないままの様だった。…血が飛び散った。