第24章 鋼牙の本能
「…え、ええ…。まあ…。」
「…………。」
私はいつもの笑顔が作ることが出来無かったので少しだけ顔を反らして答えた。家康さんは無言のまま傍観しているだけだ。…何故か、寂しそうな顔をしていたが。それを見た佐助君は不思議そうな顔をして家康さんと私を見比べたが深く聞かずに話を変えてくれた。…流石、できる忍だ。
「…そっか、良かった。……しのぶさん…申し訳ないけれど一緒に来てくれないかい?その、俺だけではあの二人を止められなくて…。」
申し訳なさそうに言う彼を見て漸く少しだけ苦笑できるようになる。
「ふふっ…いいですよ、あの二人は大変そうですからね。」
そう言うと、彼は安心したように目元を下げた。
「よかった、助かるよ。……お隣の方は?」
「ああ…そういえば、自己紹介していませんでしたね。…家康さん。」
私が隣に居た彼に促すように言うと彼は面倒くさそうな顔をしながら、口を開いた。
「…徳川家康。あんたとは仲良くする気無いから。」
彼がそう言うと、佐助君が突然目を輝かせて彼を見た。今にも迫る勢いで、彼に向き直る。
「あの…俺、猿飛佐助と言います。その、ずっと前からファンですっ!!…あ、分からないか。その、俺の一番好きな武将のあなたにお会い出来るなんて…光栄です!勿論、俺の推しはあなたです!!」
そう言うと、佐助君はガっと家康さんの手を掴みキラキラした目を彼に向けた。家康さんはそれを見て、うっとおしそうに彼を見たあと、此方に助けを求める様な目をした。
「ちょっと…こいつと知り合いなんでしょ。助けてよ、…ていうかお前はいい加減手を離せ。」
彼がそう言うのを私はおかしくて笑ってしまったが流石に助けないと可哀想だと思い、行動に出ることにした。
「ふふっ…佐助君、また後でいくらでも手を握ってください。何せ、私達は協定関係なのですから。…今は先を急ぎましょう。」
私が微笑んで言うと、佐助君は我に返った様に家康さんの手を離した。家康さんは漸く解放されてホッとしているようだが、あの数分だけで疲れているように見える。
「俺としたことが…任務を忘れるなんて…。ありがとう、しのぶさん。家康公にはまた後日ご挨拶をします。」
「あんた、何言ってんの?…しのぶ、本当にこいつ頭大丈夫な訳?…ていうか、停戦協定って?」
私は質問攻めな家康さんに一つづつ答えた。