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戦乱の蝶姫

第24章  鋼牙の本能


ガバっ…

「…えっ?…あ、あの…。」

私は突然の事に頭が追い付かなかった。何故なら、私は今、家康さんに抱き締められている。それもガッチリと…。私は頭が真っ白になって家康さんの方を向いてみると彼は私の肩に頭を預けて、絞り出すような声を出した。

「…良かった、生きてた。…ちゃんと、生きてる。」

家康さんが何度もそう呟くので私はなかなか話が切り出せなかったが流石にこの場ではまずいと思った。私がなんとかして家康さんに話を聞いてもらおうとすると遠くから声がした。

「家康様ぁぁ!!姫様はご無事ですかぁぁ!!」

「…あれって…。」

そう、遠くから聞こえた声とは家康さんが戻って引き連れてきた織田軍の皆さんの事だ。それを見た、敵の兵は一瞬たじろぎ、余りにも多勢に無勢な人数の差に逃げようとする。それを家康さんは見逃さなかった。

「ああ、問題無い!…っ織田軍に告ぐ!敵兵力を刈取れ!!」

ワァァァァ…!!

家康さんらしくない大声によって勢いづいた織田軍は敵兵を取り囲む様にして勢力を広げていった。私はその様子を間近で見ながらポカーンとしていた。何せ、家康さんにずっと抱き締められたままだ。

「…あの、家康さん…。そろそろ、離しても…。」

私がいい加減離してとお願いすると、更に逞しい腕に力を込めてくる彼。…何なんですか一体?!
私の混乱などお構いなしに彼は話しだした。

「…怖かった。」

「…え?」

突然の言葉に耳を疑う私。戸惑う私に更に言葉を続ける彼。

「…あんたが、居なくなったらどうしようって。もし、人質にでも取られたら…。そう思うと、不安でどうにかなりそうだった。」

「…っ。」

彼の初めての正直な言葉に私は息が詰まった。私が何も言い出せずに固まっていると、家康さんがようやく我に返りバッと私を離した。そして、少しだけ明後日の方向を見て言った。

「…ごめん、こんなこと言うつもり無かった。」

「…家康さん、あの…。」

私の困り顔を見て、彼は少しだけ寂しそうな顔をしながら言った。

「…俺のこの気持ちはあんたにとってはきっと要らないものだ。」

「…えっ?えっと…。」

この場には微妙な空気が流れたがある人物の登場により収められた。

「しのぶさんっ、大丈夫だった?!」

駆け寄って来た佐助君が心配そうに此方を見ていた。その時、何故か上手く笑えなかった。
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