第24章 鋼牙の本能
「…いや、善処では心配なのだけれど…。」
私は根本的な解決になってないと思い呆れながらも、謙信様なら多分、彼女の攻撃をかわせるかもしれないと思い深く考えることはやめた。そんな私の肩を軽く誰かが叩いた。
「…しのぶさん、俺も加勢してくるよ。一応彼女のストッパーとして。…あっ、わからないか。ストッパーって言うのは、制御装置って事だよ。」
佐助君の身振り手振りの話に笑ってしまった私は、笑顔で彼に答えた。
「ふふっ…私だって言いたい事くらいはわかりますよ。早く行ってあげてください、手遅れになっては困りますから。」
それを聞いて彼は目元を下げ少しだけ微笑んだあと、行ってくると言ってこの場から去っていった。そんな彼を見送った後私は城内に残っている人達に指示を出しながら、治療を続けていた。
場所は変わって岐阜城、城門前。そこではニ大勢力による戦いが火花を散らしていた。
ガキィィィィン!!ザシュっ…!!!
ワァァァァァァ…!!
「ちっ…しぶとい奴等だ。さっさと、俺の前に姿を晒せば、全員叩き斬ってやるというのに…。」
上杉軍の主将、謙信は中々突破口が見当たらない敵国の軍にしびれを切らしていた。そんな時に、後ろから謙信の背中を狙うものが現れる。謙信はもちろんそれに気付き刀を振ろうとするが敵は既に倒れていた。それも頭を潰された状態で。
「…ああ、あなたが謙信様…?…でしょうか?失礼しました。この者を斬るつもりでしたか?」
短い銀髪を靡かせ、顔の整った少女が顔に似つかわしくない血群れの鉄球を持ちながら此方を振り返った。
その事実に謙信は眉間に皺を寄せた。
「…小娘、俺の獲物を取るとはどういう了見だ?…斬られたいのか。」
謙信は突然現れた少女に警戒心を抱く。それを見た少女はニッコリと微笑んだ。
「…お姉様に言われたので黙っていようと思いましたが。……手が滑ったとなれば話は別ですよね?」
そう言うとその少女は絶対零度の目で鉄球を持ち上げる。それを見た謙信が刀を構えた。
「…待ってください、御二方。ステイです。」
ガキィィィィン…!!!チャリっ…。
「「…っ!!」」
謙信の刀と少女の鉄球が二本の懐刀によって遮られる。その偉業をやってのけた男はただ淡々と話しだした。
「…状況を考えて下さい。今は味方同士で争っている場合ではありませんよ。」