第24章 鋼牙の本能
佐助君がそう言うと、冬もそれに賛同するように続けた。
「そうですよ!お姉様の溢れ出る魅力に殿方は皆夢中です!!………ですが、私のお姉様に近づくなら容赦しません。」
そう言うと持っている鉄球を引きずるように鎖を鳴らしながら、静かな怒りを浮かべる冬に苦笑いをするしかなかった。
「ほどほどにお願いします。…さて、話はこれくらいにして、俺だけの話じゃ信じられないと思うから伝令の人がもうそろそろ来ると思うよ。」
その言葉に、頭に疑問が浮かんでいる人が何人かいると、其の場に駆け出して来る人がいた。
ダッダッダッ…ザッ…!!
「伝令、伝令!!…織田軍は上杉軍、武田軍と一時的な停戦協定を組んだ事により、上杉軍が此方に、武田軍が朝倉の方に援軍に向かったとの事です!!…間もなく、上杉軍がこの城に援軍を引き連れて来ます!」
それを聞いて、この城に安堵の雰囲気が流れる。…どうやら、本当だったみたいだ。良かった、本当に。
そう思っていると、外が騒がしい事に気が付いた。外を見てみると、この城を囲んでいた敵国の軍が別の軍に寄って囲まれている。………あれはっ!!!
「…貴様ら、いつまでこの城を囲んでいる。さっさとどけ、俺はしのぶに会いに行かなくてはいけない。」
「…なっ!貴様らっ、上杉のっ?!何故、此処に!??」
「…お前に話す義理はない。…退け、さもなくば斬る。」
「…っ糞が!!!」
それは、謙信様率いる上杉軍の人達だった。彼らに囲まれたことで、たじろぐ敵国の将軍は撤退をしようとしたがそうはさせまいと上杉軍が動く。まさに、形勢が逆転した状態だった。その様子を冬と見ていて一安心した私は城の皆さんに支持を出す。
「…皆さん、上杉軍が助けて下さいましたのでご心配なく。…私達は患者の手当を、そして動ける人達で上杉軍の加勢をしてください!」
「「「「「…はっ!!!」」」」」
私の指示どおりに、皆さんが動いてくれている。私は残りの怪我人の手当を急いで済ませて、謙信様に加勢しようと考えた。そこに隣に居た冬が近づいてきた。
「お姉様、私も加勢に行ってきます。…あの無礼者共を全員蹴散らしてきます!!」
「…ええ、間違えても上杉軍に攻撃しないでね?」
少し心配になって聞くと冬はお姉様がそう言うなら善処しますと言って鉄球を持って走って行った。