第24章 鋼牙の本能
場所は戻って、岐阜城。その場は戦慄と化していた。何故なら…。
「貴様らは包囲されているっ!大人しく投降しろ!!さもなくば、全員殺す!!」
敵の将軍の様な男が城門前で叫んでいるのが見えた。敵はもう城門の前まで来ていた。私は、この状況の打開策を必死で考える。…駄目だ、どのように動いても捕まる未来しかない。怪我人を全員守り切る事なんてできない。私が下を向いて悩んでいると、誰かが私の肩を叩いた。
「お姉様、私にお任せ下さい。…あの者共を蹴散らして見せます!」
冬が自信満々に私にそう言ってくれたがさすがの冬でも、あの人数は分が悪い。…私が更に悩んだ時だった。
「…しのぶさん、もしかして今、ピンチかい?」
「っ…?!」
突然、第三者の声が聞こえて辺りを見てみると冬しか近くに居らず、頭が混乱した。そんな状態を見透かすように更にその声は続く。
「ああ…違うよ。横じゃなくて、上だよ。」
その言葉の通り上を見上げると、そこには板を一枚外して顔を出している眼鏡を掛けた忍がいた。
「…っさ、さ…佐助君っ?!?!」
「…久しぶり、しのぶさん。」
なんと、佐助君が何故かこの城の天井から普通に話しかけてきたのだ。…もう一度言う、普通にだ。
「…なっ、何奴っ!!!」
チャリっ…
勿論、冬は彼の事を知らないので鉄球を構えた。それを見て、私は慌てて彼女を宥めた。
「冬、待って!この人は、私の友人よ!」
それを聞くと彼女は目を見開いて、彼を見た。…何故だか品定めしている様なのだが…。
「…お姉様、ご友人はもう少し選ばれた方が…。この方、物凄く怪しいです。」
品定めが終ったと思いきや、鋭く睨むように彼を見た。それを見ていた他の皆さんも彼を警戒している。
そんな事はお構い無く、天井から降りてくる彼に視線が集中した。
「…どうどう、皆さん落ち着いて。…俺はある人の命でしのぶさんを助けに来たんだ。…まあ、俺の勝手なお節介かもしれないけれど。」
「………ある人の命とは?それと、あなたは何者ですか?」
冬が警戒を解かずに、彼を睨みつけながら言う。
「ああ、そういえば、自己紹介してなかった。…俺の名は猿飛佐助。…春日山城の主、上杉謙信様の軒猿の一人だ。俺は、謙信様の命令でしのぶさんを助けに来たんだ。」
「…っ上杉謙信っ!?!?!」
城内に混沌が満ちた。