第24章 鋼牙の本能
同刻、戦場の最前線では二人の男が戦っていた。…まあ、暴れているのは実質一人だが。
「おらぁぁぁぁ!…家康っ、次に行くぞ!!」
「ちょっと政宗さんっ!!いくら何でも、早すぎます!防衛戦なんですから、もう少し加減して下さい!!」
政宗が最前線で大暴れしているのを支えている家康は流石に前に出過ぎている政宗を止めようとしていた。
「そんな事言ってたら、いつまで経ってもこの戦は終わらねぇ!とっとと敵の大将の首をとって終わらせちまったほうがいいだろ!」
戦になると熱くなってしまう、政宗の思考回路に呆れながらも家康は早くこの戦いを終わらせる事が最善の策と思い、政宗に付いていった。
…後にそれが大きな危機をもたらす事も知らずに。
「…おい、家康。気付いてるか?……敵の動きがおかしい。それに、どうもあっさりし過ぎている。情報とかなり敵側の兵の人数が違うぞ。」
急に政宗が隣で戦っていた家康の方を見ずに話す。
「…ええ、何となく。敵の兵の動きがどうも変です。それに、まるで戦うという意思がない。…それどころか此方をおびき寄せるかのような動きだ。」
家康は眉間に皺を寄せながら納得いかない今の状況に苛立っていた。
「…おい、俺らの本拠地の兵の数は?」
「…一万前後かと。奇襲に備えてなので最小です。それが何か…っ!!!」
家康はある結論に辿り着く。それは自身が考える中で最悪の展開だった。
「…奴さん、どうやら正攻法とはいかねぇーらしいぜ?」
政宗さんは岐阜城の方向いて睨んだ。
「…狙いはあくまでも俺たちの本拠地かっ…!」
家康はそう呟くと途端に馬を逆走させ走り出した。それを見て、政宗が叫ぶ。
「おいっ…家康っ!!」
「…すみませんっ!俺は本拠地に戻りますっ!!政宗さんはそのまま、前線を維持したままで!!……行くぞお前らっ!!」
「「はっ!!」」
家康は約三万の織田軍を引き連れ、本拠地の岐阜城へ馬を走らせた。それを見ていた、政宗は呆れ顔をしながらも、微笑んで呟いた。
「…しのぶを頼む、家康。」
「くそっ…、なんで気づかなかった!…頼む間に合ってくれ、しのぶ!!」
家康は後悔と焦りの念を混ぜながら必死に馬を走らせた。彼はこの時初めて恐怖の感情を感じた。嘗ては弱い奴のことなんて、ましてや女の事なんてどうでも良いと思っていた。…でも、今は違う。